チョコレート、1粒 ページ15
玄関を開けると部屋の電気が付いていた。心配症な私の事だから確認したはずなのだけれど。「あぁ、珍しいなぁ」なんて思いつつハイヒールをぽいぽい脱ぎ捨てて部屋へ脚を踏み込んだ。
「はー寒さむ」
リビングへ入れば人の家で炬燵に入りぬくぬくと温まっている彼。閉めたはずのベランダのカーテンがほんの少し開いて、人工的な夜の光がチラついている。
「ヒーローが不法侵入とは」
「あー厳しいなぁ。近くまで来たから寄っちゃった」
おいでよ、なんて自分の家みたいに炬燵へ手招きする彼に、疲れていた身体はすぅっと吸い寄せられた。
「お疲れのご様子で」
「ちょっと仕事が立て込んでて」
はぁ、とため息をつきながら夕飯をどうしようかぼんやりと考える。あ、昨日作ったシチューの残りがあったんだ。
温め直して食べようっと、なんて思っていると
「なんかさ、甘いの食べたいな」
「甘いの？」
「うん、偶にはいいかなって」
糖分補給に来た、と笑う彼に「あ」と察しが着いた。今日会えるなんてとても思っていなかったし、増してや仕事が忙しくてそれどころじゃなかった。
「…お求めのものはございません」
「えっ、まじ？連絡しとけば良かったな」
ぶー、と指でバツを作ると彼は"バツ"が悪そうな表情をした。このまま返すのも可愛そうだから、とジャケットのポケットに手を突っ込んでみるとカサ、と包み紙の音。見ればほんの小粒チョコレートがひとつころりんと出てきた。
「また後で作るから。今はこれで」
我慢して、と言い終える前に彼がぱくりとチョコレートを口に放り込んだ。「あっ」と声を漏らしたと同時にぐっと顔が近づいて性急に唇を奪う。
ただ触れるだけの口付けが、啄むものに。そして終いには合間を割って、舌と共に溶けたチョコレートが入ってくる。甘さと私の舌を味わうような口付けを繰り返しながら、彼はゆっくりと汗ばんだ手で押し倒した。
「けーご…っ？」
「…あーあ、溶けちゃった」
口の端を伝うチョコレートを舌で舐めながら彼は呟いた。
「ごめん、チョコレート待てないから」
ぷつ、ぷつ、とシャツの釦を外していくその手を止められもせず、鷹の鋭く、熱い目に射抜かれながら。
私は甘く溶かされていった。
「最初っから、俺が欲しいのは君だから」
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ミラージュ - あろまさん» リクエストお願いします。ホークスが個性事故に遭って、吸血鬼になり、主人公の血を吸うストーリーをお願いします。ご執筆頑張って下さい。お待ちしています。 (2022年1月31日 23時) (
レス) id: d117aee842 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 一気に読ませて頂きました！ 心情の表現がキレイだったり、文やお話に惹かれました。 他の夢も楽しく拝読させて頂いてますが♪ホークスのみの短編もステキです(*´ω｀*) (2020年5月4日 7時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - レインさん» こちらこそリクエストありがとうございました！シリアスしか思いつきませんでした（笑）シリアス得意なんです…！ですがお気に召して頂けて良かったです！ (2020年3月20日 15時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - リクエスト消化ありがとうございます！ギャグか甘々嫉妬系になるかなって思っていたらまさかのシリアス！とんだ誤算です…(いい意味)素敵なお話ありがとうございました！ (2020年3月18日 3時) (レス) id: b07e3f90c5 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - あっぷるぱいさん» こちらこそリクエストありがとうございました！あまり甘やかせなかった気がしたのですが、お気に召して頂いて嬉しいです！ (2020年2月14日 19時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2020年1月20日 21時
