君との記憶、どこまでも。 ページ13
写真──────それはどんな記憶も、どんな瞬間も刻むことの出来る魔法の絵画。
雫が落ちるその瞬間も、人が笑いを浮かべるその瞬間も。人間が何十年経って忘れてしまう記憶を、生命尽きたときに存在する認識されなくなってしまう宝物を、写真は刻む。
だから私は写真が好きだ。貴方と恋仲になってから、共に暮らすようになってから、もっと好きになった。
『写真館作れるね』なんて笑った彼の笑顔も撮っておけば良かったな、とカメラを向けた先は真っ白い天井。はぁと息を吐いてのそりと起き上がり、壁に掛けた数多の写真を重たい目で眺める。
「…遅いよ、啓悟」
一週間前出張でこの住処を離れた彼は未だ帰ってこない。予定では昨日だったのに、新たな任務が入ってきて足止めを食らっていた。ヒーローを恋人に持つ立場としては、充分誇りに思える素敵な事だけれど、でもそんなのは綺麗事。
お腹が空けばその空腹を満たしたくなるように、恋人が好きなら会いたい。会って触れたい、触れて欲しい。そんなのは生理現象。人間は欲深い生き物なのだ。
でもそんな感情を表に出すなんて以ての外。醜いし、何より尽力している彼に申し訳ない。だから本当は『寂しいよ』と弱みを零したメールを送りたかった。
光る画面には未送信になった本音。あぁ、駄目よ私。もう少しの辛抱なのよ。
そう我慢をしてスマホの電源を切った。もう夜も遅い。眠らなくては。
もし夜中に彼が帰ってきたら、翌朝早起きしてご飯を作らなくちゃ行けないから。それに、少しでも長く一緒にいたい。
そう思って、切ない胸に蓋をして私は布団に潜り込んだ。ふかふかの布団より、私は逞しい腕と温かな翼に包まれたい。
「──────はよ、おはよ」
間近で聞こえる挨拶に、起きたばかりの頭は反応が出来ない。何度か「うぅん」と唸ってから、そっと重たい瞼を上げると、一週間前に見たっきりの啓悟の顔があった。
「…ぁ、啓悟…？」
「そ、待たせたね。おはよう」
言葉を発した私に口元を緩ませると、彼は飛び起きた私を腕に寄せた。寝起きで力が入らず、思いの他体重を預けてしまう私に「ごめんね」と寂しげな声が囁いた。
久方ぶりの彼の匂いと腕の温もりに安堵して、子どもみたいに涙が溢れた。
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ミラージュ - あろまさん» リクエストお願いします。ホークスが個性事故に遭って、吸血鬼になり、主人公の血を吸うストーリーをお願いします。ご執筆頑張って下さい。お待ちしています。 (2022年1月31日 23時) (
レス) id: d117aee842 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 一気に読ませて頂きました！ 心情の表現がキレイだったり、文やお話に惹かれました。 他の夢も楽しく拝読させて頂いてますが♪ホークスのみの短編もステキです(*´ω｀*) (2020年5月4日 7時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - レインさん» こちらこそリクエストありがとうございました！シリアスしか思いつきませんでした（笑）シリアス得意なんです…！ですがお気に召して頂けて良かったです！ (2020年3月20日 15時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
レイン - リクエスト消化ありがとうございます！ギャグか甘々嫉妬系になるかなって思っていたらまさかのシリアス！とんだ誤算です…(いい意味)素敵なお話ありがとうございました！ (2020年3月18日 3時) (レス) id: b07e3f90c5 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - あっぷるぱいさん» こちらこそリクエストありがとうございました！あまり甘やかせなかった気がしたのですが、お気に召して頂いて嬉しいです！ (2020年2月14日 19時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2020年1月20日 21時
