その能面、俺が剥がしたる【宮侑、宮治】

王子様は一筋 ページ43

「なんや意外なんやけど」


そう台詞を投げかけると佐原は動かしていたシャーペンを止めて「え」と声を漏らす。その手元にはシナリオやろうか。台詞や文章がズラリ並んどる。

「佐原、消極的やんか。なんに、シナリオ制作て」

俺はえぇと思うけどな、と付け足すと佐原はシャーペンを持つ自身の手をじっと見つめて言葉を紡ぐ。



「私演劇とか得意じゃないから。だからこういう裏で支える仕事がいいなって。それに、文化祭楽しみにしてたんだ、1年の時から」



去年は体育祭だったからね、と小さく微笑む佐原は、なんややる気に満ち溢れとって。その晴れやかな表情からホンマに文化祭楽しみにしてるんが伝わってきた。

「楽しみにしとるわ」と頭に手を置くとブンブン頭振って「辞めて恥ずかしい」なんて言うた。そないなこと言うたらもっとしてやりたくなるんにな。









「ぜっっっったい嫌やからな！！」



俺がそう叫ぶと、周りから「えぇえ」と落胆の声が漏れた。題目は『配役決め』そして決まった配役の中で空白が一つ。王子様役。

あれからシナリオ制作(佐原)と言いつつ、クラスの意見を取り入れて王道を少しアレンジした冒険ファンタジーになった。

配役は王子様、それとお姫様、王子様に密かに想いを寄せる村娘、お姫様を攫う魔王、騎士、その他…と言ったように、正に王道中の王道。

そこで配役決めが現在行われとる訳やが、王子様が余った途端、ほぼクラスメイト全員の視線が寝とった俺に集まった。あまりの圧に視線だけで起きてしもた。怖すぎるわ。


「いや、宮以外、適任おらんやんけ！」
「顔はイケメンなんやから出とけや！」
「主人公とかホンマだるいわ！ちゅうか、演劇の練習で部活減るとかマジで嫌や」


その日は周りの説得虚しく、結局俺は首を縦にせんかった。目立つのは嫌いやないけど、これからどんどん試合も練習もある。バレーの練習が減るんは納得出来へん。

チャイムが鳴るなり俺が席を立つと「なんやねん」と不満の声が上がったが知らん。俺の1番はバレーや。それに、お姫さん役が1年の時ちょっと付き合っとった元カノやった。顔も性格も悪ない美人やけど、気まずすぎる。それに、「やっぱりお似合いカップル」なんちゅうような噂が立つようんなったら面倒や。






(…やけど、お姫さん役が佐原やったら、やったかもしれんな)






彼奴以外の王子様にはなりたないわ。

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