その能面、俺が剥がしたる【宮侑、宮治】

こじ開ける ページ15

「…え、と、宮くん？」

これまでにないくらい動揺して瞳を揺らす佐原を見つめながら、足を進めて距離を詰める。


「──────俺、お前のこと嫌い言うたけど、なんでだか分かっとるんか」


突飛な質問に、強ばっていた佐原の身体から少し力が抜けて「え…？」と顔を上げる。


「お前、俺の事、苦手言うたけど、嫌いやろ」


自分がどういう顔をしとるんか分からへんけど、やけにムカムカしとった。ずっと、佐原の能面剥がした日から、胸に黒い靄がかかっとるんや。

無遠慮な断言した問いかけに「…っ」と息を飲んで、下を俯く佐原。



「それも、最初っからや。目が合う度気まずそうによそよそしく逸らしよって。かと思えばサムには普通やんか。なんや？なんで俺のこと嫌っとる？」

「言え、言うまでここから出さへん。なんで嫌われとんのか、避けられとるんか、気になる、それだけや」



別にお前を責めようとは思っとらん。感情のままに言葉を絞り出した。大きく息を吸って、吐いて。それから、俯く佐原を──────否、佐原の内側を、無理やりこじ開けて覗き込んだ。

佐原は同じようにすぅ、と息を吸ってから、苦しげに「似てるんです」と吐き出す。


「…誰にや」

「私を虐めてた人に」


虐めてた人。思わぬワードに、一瞬息が止まる。固まる俺に構わず、佐原は言葉を続けとった。


「雰囲気が、似てて」

「…其奴男か？」

「男子です。宮くんみたいに人気者で、目立ってました。それで、言われたんです。『お前みたいな地味女気持ち悪い』って。私、なんにもしてなかったんですけど

そこから虐めが始まって、皆彼の言うことを聞いて私を虐めました」


そこで言葉を区切ると、佐原はスカートをぎゅっと握りしめて小さく震えだした。声は上ずり、掠れて──────あぁ、怯えとる。



「だから、だから私、似ている貴方の事を避けました。それから、男子も、少し怖くて」



──────ごめん、なさい。

小さな声で、佐原がそう絞り出す。そして、目の前でポロポロ、静かに泣き出してまう。

俺の胸の靄が晴れる──────はずやった。なんに、俺の心はどうしようもなく、揺れとる。想像していたような「不真面目だから」「調子に乗ってるから」みたいな理由やなかった。

佐原がずっと胸に抱え込んどったもん、全部無理に俺が引っ張り出して、晒してしもた。






「──────んや、それ」

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