その能面、俺が剥がしたる【宮侑、宮治】

おんなじ ページ13

「…なぁ俺行かんでようない？」

「んな訳あるか！委員会活動なんやから！」


同じクラスの友人に引っ張られながら俺はため息をついた。今日は月1回の大規模な委員会活動の日。委員会全員で作業に当たらないかんっちゅう、なんとも嫌な日や。


「…はよ終わらせてバレーするわ」
「お前ん頭ん中はめしかバレーやな…」


体育館を使う委員会はない。やから、早う活動が終われば体育館を独り占めしてバレーができるっちゅう事。そのことに気づきて俺は突然俄然やる気に満ちる。ジャージに着替え、軍手をはめ、ドカドカと外へ足を進める──────と。


「A！その肥料こっち！」

「あ、ごめん！」


同じようにジャージに身を包み、軍手をはめ、髪の毛をまとめ、肥料を抱えて走る佐原の姿があった。








まさか、おんなじ委員会やっとはなぁ。

土をいじりながらボヤくと「偶然だね」と佐原は花の苗を植える。そっと苗を持ち上げて、静かに植える手つきは繊細やった。

「佐原、園芸似合うな」

「えっ…、う、うん？ありがとう？」

疑問符を付けた返事から分かる戸惑いように「素直やんなぁ」と内心思う。相変わらず表情はあんまり変わらへんけど、なんや前より雰囲気が柔らかくなった。


「宮くんはどうして園芸委員に？」

「あー、中庭に畑あるやん？夏とかに胡瓜なっとる畑。園芸委員になったら畑の野菜食えるかな思て。そしたらあれ園芸部の畑なんやって、後から知ってな」


やから入ったんや。肥料を花壇にばら撒きながら言うと「…ふ、ぷっ、ふふ」と、どこからか笑い声がする。

声を辿ると──────、佐原が必死に笑いを堪えとった。その様子に呆気に取られる。と同時に、自分の言った事が恥ずかしゅうなって声を荒らげた。


「なに笑てん！」

「私も、同じこと考えてたの。胡瓜食べられるかなーって」


軍手を外して目元を押さえる佐原の答えに、「っぷ、はは！ホンマか！」と吹き出してまう。


「ホンマの食いしん坊やな！」
「あはは！面白い！」


同じこと考えてたなんて、っちゅう佐原の笑顔が、ホンマに活き活きとしてて、太陽の陽を受けて、やけに輝いとった。

その頃、もう"はよバレーしに行く"っちゅう考えは、どっか消えとった。








「…なんやねん、その顔は」


片割れの珍しい笑い声に2階から見下ろせば、その隣では能面女言われとるはずの佐原が満面の笑顔を浮かべとった。


「…笑えるんか、彼奴」


あぁ、なんや、胸糞悪いわ。

原因不明の感情→←それとこれとは別

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す