躊躇い ページ30
『秘密って言ってたよ』
角名の言葉が離れんまま、翌日になってしもた。結局カラオケにホンマにサムは来おへんかった。久しぶりにむちゃくちゃ歌って、北さんもキレキレの演歌披露してくれて。
ごっつ楽しかったはずなんに、来ない片割れが気になってしゃあなかった。
俺より先に帰ってきとったサムは、朝とはちゃうゴキゲンやった。なんやすっきりして清々しい顔しとった。初めて空の蒼さと大きさを知ったような。
問いただしても答えへんかったし、急ぐサムを見たらしい角名に聞くと、サムは「秘密」と言って教室を出ていったっちゅう。
行先が、共に行った相手が、何処なのか、誰なのか、兎に角気になってしゃあなくて、俺は心に靄を感じたまま日をまたいだ。
なんや落ち着かなくて、教室でバレーボールを回しとると、佐原が登校してきた。
「はよ」
「おはよう侑くん」
佐原、佐原A。敬語からタメ語になったっちゅうんに、まだどこか距離のある此奴。
俺の直感が告げとった。昨日サムの態度には佐原が関わっとるって。どこか一緒に行ったんやないかって。
心做しか今日の佐原はいつもより気が抜けとるような気がする。テストが終わったからかもしれんけど、でも。
「なぁ佐原」
「なに?」
佐原が此方を向く。目と目が合った途端、準備しとった質問が、一気に奥に引っ込んでもうた。昨日サムとどこか出掛けたか、それだけの質問なのに、ほんの少しだけ躊躇いを持つのはなんでやろ。
それでも、この心の靄を晴らしたかった。「昨日、お前──────」と、問いかける1歩手前でチャイムが鳴って。それとほぼ同時に担任が来よった。
「昨日?」
小さく聞き返す佐原に「なんでもあらへん」と返して俺は前を向いた。こんな、こんな質問一つで、何躊躇っとるんや阿呆。心の中で自分をどついとると、担任が「えーテストも終わっただし」と声高らかに告げる。
「席替え、しよか」
約数ヶ月前に望んでいた、でも今は全く望んでないイベントが、宣言された。
682人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あろま(プロフ) - きのこりさん» 分かりずらくてすみませんでした。ありがとうございます!これからも頑張ります! (2020年4月17日 11時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - きのこりさん» ご指摘ありがとうございます!ここなのですが、夢主が侑が何故自分を誘うのか分からず、「普通なら治くんを誘うのでは?もしかして治くんが映画が嫌いなのかな?」と思って「治くん映画嫌いなの?(だから治くんじゃくて私を誘うの?)」という意味合いで聞いています! (2020年4月17日 11時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
きのこり - ページ36の虫除けで、夢主が「治くん映画〜」てあったんですが、侑くんの話なので、侑くんじゃないでしょうか……。最近この話を知りました。とても楽しく読ませていただいてます。これからも頑張ってください。 (2020年4月16日 22時) (レス) id: b4f9762f22 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - アオさん» やー!本当に申し訳ないです!!確認して直しました!指摘ありがとうございます! (2020年3月14日 22時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - あの、以前私が治くん視点なのを侑くん視点と勘違いした話なのですが、夢主の呼び方が「佐原」だったので勘違いしたので、直した方がいいと思います。今更ですみません。 (2020年3月14日 22時) (レス) id: eee0ca23b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あろま | 作成日時:2020年2月19日 23時