ダブル早とちり ページ22
(あぁ、もう、無茶苦茶や。全部)
昨日の小さな事で惑わされて。片割れと本気の喧嘩をして。そしてこの胸の靄を晴らしたくて佐原のクラスへ行けば、俺の元へ来ようとする佐原の腕を、ツムが"行くな"とでも言うように掴んだ。
直ぐにその手は離れたし、ツムもなんも言わへんかったけど、無性に気がかりでしゃあなかった。
「宮くん?」
佐原に『話あるから着いてきてや』と言ってそんな事を考えているうちに呼びかけられて我に返る。気づけば空き教室の真ん前まで来とった。
「すまん、ここら辺でえぇわ」
振り向いて後ろの佐原に向き合う。きょとんとした彼女の表情にほんの少しだけ安堵して息を吸った。
「…昨日の、一緒に昼めし食べん方がえぇって、なんで?」
謎の焦燥感を覆い隠して目を逸らしながら聞くと、佐原は目をぱちくりさせて「あ、そのこと!」と驚いとる。引かれてもうたかなと内心心配する俺に佐原はそっと声を潜める。
「え、うん、…その、み、宮くん、彼女がいるでしょ?」
「…え、…ん?──────は?」
驚きすぎて間抜けな声が出てもうた。目を丸くするどころか見開いたまま固まる俺に、佐原は同じように固まって「え?」と俺を見つめる。
「いや…、え?なんでそうなるん?」
「え、あの、ハンバーグ定食譲ってもらったとき、可愛いお弁当箱持ってたでしょ。だからあれ、彼女が作ってくれたお弁当なのかなと思って…」
ほら、宮くんが別の女の子と食べてたら彼女さん嫌だと思って…。とごにょごにょと話す佐原に呆気に取られ、俺はポカンとしてまう。
──────なんやん。角名が嫌いとか、全然ちゃうんか──────。
その途端、冷静な自分がふと息を吹き返し「いや、あれは差し入れでもろたやつやから!」とツッコミをする。
「あ、そうだったんだ」
「せや!あー、もう、変な心配したわ!」
納得!っちゅう顔をする佐原とは対照的に、俺ははぁとため息をついて顔を片手で覆った。これまで勝手に理由を決めつけてくだらない事を考えていた自分が嫌んなると同時に呆れてまう。突如脱力した俺に控えめに声を掛ける佐原に顔合わせができん。
「…なんか、変な勘違いさせちゃってごめんね」
「いや、俺の早とちりやから…ホンマ」
「え、私の方が早とちりだよ!」
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あろま(プロフ) - きのこりさん» 分かりずらくてすみませんでした。ありがとうございます!これからも頑張ります! (2020年4月17日 11時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - きのこりさん» ご指摘ありがとうございます!ここなのですが、夢主が侑が何故自分を誘うのか分からず、「普通なら治くんを誘うのでは?もしかして治くんが映画が嫌いなのかな?」と思って「治くん映画嫌いなの?(だから治くんじゃくて私を誘うの?)」という意味合いで聞いています! (2020年4月17日 11時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
きのこり - ページ36の虫除けで、夢主が「治くん映画〜」てあったんですが、侑くんの話なので、侑くんじゃないでしょうか……。最近この話を知りました。とても楽しく読ませていただいてます。これからも頑張ってください。 (2020年4月16日 22時) (レス) id: b4f9762f22 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - アオさん» やー!本当に申し訳ないです!!確認して直しました!指摘ありがとうございます! (2020年3月14日 22時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - あの、以前私が治くん視点なのを侑くん視点と勘違いした話なのですが、夢主の呼び方が「佐原」だったので勘違いしたので、直した方がいいと思います。今更ですみません。 (2020年3月14日 22時) (レス) id: eee0ca23b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あろま | 作成日時:2020年2月19日 23時