不測の事態 ページ7
親子連れも、女性のファンたちも、初めて見るホークスの表情に惚けているようだった。
しかしそれも一瞬、パッとマジシャンの様に両腕を上げてから胸の前に当てると仰々しくお辞儀をした。
「はい、俺からは以上！ご清聴ありがとうございました」
すっかり元に戻ったホークスのおどけた声に皆からわっと声が上がる。友人もその1人で、高らかに拍手をしながら「ホークスー！！」と彼に声援を送っていた。
「ね、ねぇねぇ、ホークス！ホークスこっち見なかった！？ね──────」
興奮気味に私に話しかける友人がギョッとした声を上げる。ハッとそちらを見ると、ぼやけた視界の中、友人は不思議そうに眉を顰めていた。
「な、なんで泣いてるの…？」
頬を伝う感触に手を当てると、指先が濡れた。瞬きをするとまた生まれた涙が瞳から零れてぽろぽろ落ちていく。
「え──────」
気づけば、頬を涙が伝っていた。
「なんで？そんなに感動した？」なんて顔を覗く友人にうんともすんとも言えないで私はただ涙を拭っていた。
『──────世界が色鮮やかに見えるから』
『なんで』その理由は。それはきっと、貴方の言葉が嬉しかったから。
貴方の世界を色鮮やかに出来たほど、私って大きい存在なのかな。
なんて、自惚れてしまったから。
深呼吸し、やっと心身共に落ち着いてきたとき、舞台裏から司会の女性がマイクを手に姿を現した。
「ホークスに貴重なお話をして頂きましたね！ホークス、ありがとうございました！
えー、お次は握手会に移ります！先行チケットお持ちの方からのご案内となります！」
"握手会"不測の事態に涙どころか息まで止まった。握手会ってなんだ。握手会ってもしかして、握手会？
「あ、握手会…？」
「あれ、言ってなかったっけ。握手会やるの！私たちは先行チケットだから先だよ」
グイグイ腕を引っ張る友人に、顔からサッと血の気が引く。
握手会。ということはつまり、ホークスと"他人の振りをして"握手をするということ。
元々感情が表に出やすい私は演技や嘘が大の苦手なのだ。
(え、え、どうしよう…)
直接握手をして会話するなんて、スキャンダルを恐れている私にとっては不安要素でしか無かった。
大胆な彼のことだ。もしかしたら『俺の彼女です』とか公表しかねない。
握手の番が回ってきたときに、ホークスが私にどんな反応をするのかと思うと胃がずん、と重くなった。
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おちゃきち(プロフ) - イッキ読みさせていただきました！あとがきにある、ホークスの恋愛観、めっちゃストンときました。凄く記憶に残るとっても濃くて良い作品だなと思いました。素敵な作品を書いてくださってありがとうございました…😭 (2021年10月15日 12時) (
レス) @page48 id: 78dc48b955 (このIDを非表示/違反報告)
かよ(プロフ) - めっちゃくちゃ面白かったです！！！最高です！！本当にありがとうござます！！これからも応援してます！ (2020年7月5日 14時) (レス) id: a82fd268db (このIDを非表示/違反報告)
紅波 - もう既に書き終わっている状態で一気読みしました。もう最高です。どこからこんなに素敵な小説が出てくるのか知りたいです...。応援してます！ (2020年6月5日 8時) (レス) id: 2ce5490af6 (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - 少し覗いていない間に完結していて驚きました。この2人には一生2人で飛んでいてほしいですね。(クルーズ船に乗ってる人になりたい)何はともあれ(？)完結おめでとうございます！素敵な作品をありがとうございました！ (2020年5月17日 16時) (レス) id: eee0ca23b5 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 花帆さん» コメントありがとうございます！そんな風に言って頂けて嬉しいです！ホークスをとびきり幸せにできて私も大満足です…！閲覧ありがとうございました！ (2020年4月28日 8時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2020年1月2日 22時
