色鮮やか ページ6
(え、今、こっち──────)
息が一瞬、止まってしまう。分かりやすく動揺した私からパッと目を離すと、啓悟は
「今日は小さな子もいっぱいいるから、分かりやすく話すかな。
皆、大好きなもの、大切なものって譲れないでしょ？」
例えばそうだな、ヒーローのフィギュアとか、大好きなお菓子とか。と子供にも分かるよう丁寧に離す啓悟に「あるー！」と元気な子供が声を上げる。
啓悟は「小さい子は元気だねー」とからから笑うとまた言葉を続けた。私も子供と同じように啓悟の話を食い入る様に聞く。初めて彼が目指すヒーロー像に触れている気がする。
「俺以外のヒーローもそうだけど、皆そういうものがあるんだ。譲れない、これだけは譲れないってもの。
それはヒーローによって違うけど、大体皆の笑顔だったり、日本の平和だったり。
勿論俺もそうだ。皆が幸せに暮らせるように願ってる。けどね、それより──────」
そこで言葉を区切ると、啓悟は…いや、ホークスは真っ直ぐ前を見つめてそう告げた。
「ただ一つ、絶対に譲れない大切なものがある」
絶対に譲れない大切なもの。そう聞いて思わず肩が跳ねた。真逆、そんな、私の思い上がりよ。
そう思うけれど、先程の啓悟の視線が忘れられなくて、続きの言葉に期待してしまう自分がいる。
啓悟はスッキリとした顔で続きを語りだした。いつの間にか黄色い悲鳴も消えていて、誰もが真剣に彼の話に耳を傾けている。
「危機にあったとき、辛い時、翼が動かなくなってきたとき、真っ先に思い浮かべるんだ。譲れない大切なもののこと。
そうすると、立つので精一杯だった足に力が入る。傷ついた翼が広がる。真っ直ぐ、力強く前を向ける。
そういう存在があって、俺は皆の元へ駆けつけるヒーローになれてる。大切なものが大切になればなるほど、俺は強くなれる。
それはなんだっていい。好きなおやつでも、家族でも、ありきたりの景色でも。
ヒーローになりたい人も、なりたくない人も、そんな存在は作って欲しい。そんな存在が出来たらきっと、いや」
ホークスがゆっくりと翼を広げる。広がる真紅の翼が陽の光を受けて輝く様子に、私は魅入っていた。
───世界が色鮮やかに見えるから
酷く穏やかな声音でホークスは目を細めて微笑んだ。黄金色の瞳はしっかりと私だけを見つめていて、胸がどくん、と大きく高鳴った。
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おちゃきち(プロフ) - イッキ読みさせていただきました！あとがきにある、ホークスの恋愛観、めっちゃストンときました。凄く記憶に残るとっても濃くて良い作品だなと思いました。素敵な作品を書いてくださってありがとうございました…😭 (2021年10月15日 12時) (
レス) @page48 id: 78dc48b955 (このIDを非表示/違反報告)
かよ(プロフ) - めっちゃくちゃ面白かったです！！！最高です！！本当にありがとうござます！！これからも応援してます！ (2020年7月5日 14時) (レス) id: a82fd268db (このIDを非表示/違反報告)
紅波 - もう既に書き終わっている状態で一気読みしました。もう最高です。どこからこんなに素敵な小説が出てくるのか知りたいです...。応援してます！ (2020年6月5日 8時) (レス) id: 2ce5490af6 (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - 少し覗いていない間に完結していて驚きました。この2人には一生2人で飛んでいてほしいですね。(クルーズ船に乗ってる人になりたい)何はともあれ(？)完結おめでとうございます！素敵な作品をありがとうございました！ (2020年5月17日 16時) (レス) id: eee0ca23b5 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 花帆さん» コメントありがとうございます！そんな風に言って頂けて嬉しいです！ホークスをとびきり幸せにできて私も大満足です…！閲覧ありがとうございました！ (2020年4月28日 8時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2020年1月2日 22時
