告白 ページ45
情報屋。聞きなれない単語に、目に溜まった涙が引っ込む。そんな私の呆気に取られた顔を見ながら、啓悟は言葉を続ける。
「情報屋は敵とも繋がってる可能性があるから、ヒーローが情報屋に協力願いするのはあまり良くないことでさ。
隠密にしてたんだけど、この通りバレちゃったよ」
馬鹿でしょ、俺。と笑う啓悟の表情が、胸を突き刺す。彼女が本当に情報屋かどうかなんて、一般人の私には分からないし、知る術もない。けれど、もう分かっていた。啓悟は嘘をつかないって、分かってた。
「…俺の安直な行動のせいで、Aの傷を抉るようなことをした。本当に、ごめん」
深々と頭を下げる啓悟に「いいの」と掠れ声で返す。垂れ下がった黄金と赤がどんどんぼやけて霞んでいって、気づけば両頬を涙が自然と伝っていた。
ハッとして慌てて目元をゴシゴシと擦ると、顔を上げたらしい啓悟がそっと身体を離して頬を包み込む。直に触れられた彼の手が心地よくて目を瞑ると、彼は額にゆっくりキスを落とした。
「…あのね、A聞いて欲しい」
溢れる涙を拭いながら、啓悟は静かに呟いた。心做しか震える声音に、息を潜めて耳を必死に傾けて、静かに頷くと、彼は言葉を紡ぎ出す。
「俺は両親もいない。親戚身内もいない」
突然の言葉に、私は息を自然と止めた。彼から過去も、家族の事も聞かされていなかったからなんとなく予想はしていたけれど、それでも動揺した。そんな私の戸惑いを感じ取ったらしい啓悟は、私の手を握って言葉を続ける。
「勿論友人もいない。だから家族愛とかも分からない。俺のこの愛し方が合ってるのか間違ってるのかすら分からない。俺にあるのは、俺を価値作るこの背中の翼と、ほんの少しの富と名誉だ」
啓悟の言葉の隅々から、やっと"ホークス"として生きてきたこれまでの道筋が見えた。彼は、今まで"鷹見啓悟"という名前を捨てて、世の中の平和のためだけに翼をはためかせてきた。その速さで自分の幸福と、真実を置き去りにして。
(あぁ、痛い。心が痛いよ)
ずっと独りだったんだ。ずっと、ようやく分かった気がする。初めて出会った時、貴方が「一緒に飛んでくれる人を探してる」と言った理由が。
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おちゃきち(プロフ) - イッキ読みさせていただきました！あとがきにある、ホークスの恋愛観、めっちゃストンときました。凄く記憶に残るとっても濃くて良い作品だなと思いました。素敵な作品を書いてくださってありがとうございました…😭 (2021年10月15日 12時) (
レス) @page48 id: 78dc48b955 (このIDを非表示/違反報告)
かよ(プロフ) - めっちゃくちゃ面白かったです！！！最高です！！本当にありがとうござます！！これからも応援してます！ (2020年7月5日 14時) (レス) id: a82fd268db (このIDを非表示/違反報告)
紅波 - もう既に書き終わっている状態で一気読みしました。もう最高です。どこからこんなに素敵な小説が出てくるのか知りたいです...。応援してます！ (2020年6月5日 8時) (レス) id: 2ce5490af6 (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - 少し覗いていない間に完結していて驚きました。この2人には一生2人で飛んでいてほしいですね。(クルーズ船に乗ってる人になりたい)何はともあれ(？)完結おめでとうございます！素敵な作品をありがとうございました！ (2020年5月17日 16時) (レス) id: eee0ca23b5 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 花帆さん» コメントありがとうございます！そんな風に言って頂けて嬉しいです！ホークスをとびきり幸せにできて私も大満足です…！閲覧ありがとうございました！ (2020年4月28日 8時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2020年1月2日 22時
