第2のお姉さん ページ23
タクシーで空港に向かい、人混みの中を見渡しながら進む。約束した場所へ向かうと、帽子を被った長身の彼を見つける。小走りで向かい、「焦凍くん？」と声を掛けると、スマホから顔を上げた彼がこちらを向いた。
「Aさん、おはようございます」
「おはよう、焦凍くん」
荷物はショルダーバッグのみ、という手軽な格好に首を傾げると、焦凍くん曰くもう既にホテルに預けた、とのことで。
「焦凍くん、お仕事は何時からなの？」
「夜7時からです。だからそれまではAさんと一緒にいられますね」
ふわり、花が咲いたように微笑む彼に、不意に目を奪われる。しかしハッとして、私はぶんぶん頭を振った。
(焦凍くんは歳下。焦凍くんは歳下…！屹度私の事は第2のお姉さんくらいに思っているはず…！)
「そっか、じゃあそれまで福岡案内でもしようかな」
「よろしくお願いします」
ふふん、と歳上ぶって胸を張ると、焦凍くんは律儀に軽く頭を下げた。
ずず、と隣で麺を啜る焦凍くんが「美味い」と瞳を輝かせる。駅周辺をウィンドウショッピングしながら、お昼の時間という事で老舗の蕎麦屋さんに来ていた。
「焦凍くんお蕎麦本当に好きなのね」
なんだか可愛いなぁ、と思いながら食べる様子を眺めていると、「好きです」と顔を緩ませる。
「良かった、ここ福岡で一番美味しいお店なんだって。やっぱり地元の人に聞くのが一番だね」
事前に焦凍くんが蕎麦愛好家だという情報は冬美先輩から仕入れていた。啓悟に聞くと場所と営業時間までキッチリ教えてくれた。流石地元の人気ヒーローだ。
「…彼氏ですか？」
「えっ」
「彼氏さん、前に話してた」
思わぬ台詞に口篭る私を、灰とエメラルドグリーンが見詰める。微かに表情に影を落とした焦凍くんに、ごくりと唾を飲んだ。
「うん、そうなの、彼氏に聞いて」
「そうなんですね。上手くいってるんですか？」
「…うん。大丈夫」
先日のデートの際の出来事を思い出して、自然と頬が緩む。密かに垣間見た、彼の本当の姿。私の気持ちを、包み込んで受け入れてくれたから。
「…それなら、良かったです」
ふ、と焦凍くんの顔に笑みがさす。形の良い眉をほんの少し下げた、悲しげな色をふくんだ、切ない微笑み。
そのときの私は、その表情に「どうして？」と問う事も出来なければ、やんわりと感じていた彼の心の内を真実だと認事すら出来なかった。
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おちゃきち(プロフ) - イッキ読みさせていただきました！あとがきにある、ホークスの恋愛観、めっちゃストンときました。凄く記憶に残るとっても濃くて良い作品だなと思いました。素敵な作品を書いてくださってありがとうございました…😭 (2021年10月15日 12時) (
レス) @page48 id: 78dc48b955 (このIDを非表示/違反報告)
かよ(プロフ) - めっちゃくちゃ面白かったです！！！最高です！！本当にありがとうござます！！これからも応援してます！ (2020年7月5日 14時) (レス) id: a82fd268db (このIDを非表示/違反報告)
紅波 - もう既に書き終わっている状態で一気読みしました。もう最高です。どこからこんなに素敵な小説が出てくるのか知りたいです...。応援してます！ (2020年6月5日 8時) (レス) id: 2ce5490af6 (このIDを非表示/違反報告)
アオ(プロフ) - 少し覗いていない間に完結していて驚きました。この2人には一生2人で飛んでいてほしいですね。(クルーズ船に乗ってる人になりたい)何はともあれ(？)完結おめでとうございます！素敵な作品をありがとうございました！ (2020年5月17日 16時) (レス) id: eee0ca23b5 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 花帆さん» コメントありがとうございます！そんな風に言って頂けて嬉しいです！ホークスをとびきり幸せにできて私も大満足です…！閲覧ありがとうございました！ (2020年4月28日 8時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2020年1月2日 22時
