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「こりゃあ今年は期待が出来そうだ」
じゅるり、すぐ傍で鬼が舌舐めずりをする音がする。生暖かい吐息が頬を掠めて気持ちが悪い。
「女、目隠しを取れ」
ずっとしてきた目隠しを、震える手で取った。すると広い部屋の中に鬼がすぐ近くで下卑た笑みを浮かべていた。
「顔はいまいちだな…、まぁ良い。お前は甘い匂いがする…。
あぁ、太股は一段と肉があって美味そうだ」
ずる、と鬼の手が着物を乱暴に捲りあげる。外気に晒された脚の感覚にゾッとした。
「…っ、ふ、ぅ…」
気持ちが悪い。湿った掌の感覚に涙が出そうになるのを堪えた。泣いてはいけない。泣いたら私の負けだ。奴に負ける訳には。
「矢張り恐怖に歪む顔を見るのが一番愉快なものだな…。去年の女は泣き叫んでいたが、お前は強い。心が強い。
あの時の女は良くなかった…。細くて肉が殆ど無くて不味かった」
去年、隣町から"嫁入り"に言った女の子は恐怖で痩せこけてしまったのだ。そりゃあそうだ。鬼に食べられにいくだけなのだから。
「さぁ、お前はどんな味がする?」
鬼の爪が帯に切り目を入れるとしゅるりと帯が解けた。あぁ、誰にも見せたことの無い身体を初めて見せるのが鬼だなんて。
(あぁ…不死川様に、最期、想いを伝えたかった…)
いつも私の家の茶屋に寄って、おはぎを美味いと食べてくれていた貴方。
悲しい過去を持ちながら、孤独と闘って人々を守り抜いていた貴方。ずっとずっとお慕い申しておりました。
(さようなら、不死川様…)
鬼の手が着物に掛かった、そのとき。
「てめェ…誰の女を暴こうってか分かってんのかァ?」
怒りに満ち溢れた声が聞こえたと同時に、鬼の手が飛んだ。
血が飛び散る様子に悲鳴を上げる私を片腕で抱き抱えると、不死川様は後ろへ飛んだ。
「し、不死川様…っ」
今まで我慢していた涙が堰を切ったように溢れてきた。ぐす、えぐ、と情けなく嗚咽を漏らす私の頭を優しく撫でると「遅くなって悪ィ」と微笑んだ。
「貴様…、貴様ァ!鬼殺隊…、鬼殺隊…!!
俺の嫁を返せ!!返せ!!」
そう狂ったように叫びながら襲い掛かってくる鬼の肩がスパッと切れる。
「ぎぃやぁあァぁあ!!」
「俺の嫁ェ…?巫山戯たこと抜かしやがってェ」
次の瞬間、疾風のごとく踏み込んだ途端、鬼の首が真一文字に切れていた。
「──────俺の嫁だァ」
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あろま(プロフ) - 謎の桃さん» コメントありがとうございます!好きと言って頂けて嬉しいです!続編の方も是非ごらんください! (2020年1月5日 17時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
謎の桃 - ぐっ…好きです…(死 (2020年1月3日 11時) (レス) id: 54222cb971 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - あろまさん» 分かりました。大丈夫です。 (2019年11月1日 9時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 零奈さん» リクエストありがとうございます!実弥ですね!実弥らしいお話ですね…!精一杯書きます! (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 美桜さん» リクエストありがとうございます!煉獄さんのリクエスト嬉しいです!ですがすみません、夢主が柱という設定を普通の一般隊士にしたいです。ご了承ください…! (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あろま | 作成日時:2019年9月25日 17時