蒲公英：宇髄天元 ページ16
コンコン、と骨ばった手が戸を叩く音がする。
聞き慣れた音に「あぁ、またか」なんて内心ため息をついた。居留守を使ってもあの耳がいい男の事だ。絶対にバレてしまうし、扉をこじ開けてでも入ってくるからどうしようもない。
諦めて扉を開けると、非番なのだろうか。着流しを着ていて髪の毛も降ろしていた。
「A…、よぉ、顔見せてくれて嬉しいぜ」
「…用がないなら帰って」
出来るだけ低い声でそう冷たく言い放つと天元はそれまでの安堵したような微笑みを崩してしまった。そうして悲しそうに形のいい眉を下げて声の調子を落とす。
「なぁ、何時になったら戻ってくる…俺の元に」
「…もう、戻る気なんてないから」
ピシャリと乱暴に扉を閉めようとするが、天元はそれを許さなかった。
逞しい右腕で私が両手で閉めようとする扉をぐっ、といとも簡単に押さえてしまう。
「なんでだ。どうしてお前は急に縁を切ろうだなんて言うんだ！
雛鶴もまきをも須磨も派手に心配してんだよ。俺も…お前がいねぇのは辛い。お前は俺の嫁だろ…」
「…っ、嫌いなの！貴方のことが、天元の事が！」
もういいでしょ、と怒りに任せて扉を閉めようとすると勢いよく天元が玄関に入ってきた。そうしてそのままの勢いで私を壁へと追いやってしまう。
「ちょ、てんげ、んっ、ん…！」
大きな背が屈んで、いつの間にか口付けられていた。
久しぶりの口吸いに呼吸を仕方を忘れて口を開くとすかさず彼の舌が入り込み、口内を蹂躙する。
ちゅるり、仕方を知り尽くした彼の口吸いに胸がキュッと苦しくなった。舌を絡める度に体温が熱くなっていく。
「っはぁ、はぁ…っ、ぁ…」
「俺は…、俺は、お前のこと…っ」
酷く切なげな声音でそう囁くと、天元は本能のままに浴衣の中に手を入れた。大きな硬い手が直に触れて頬にかぁあっと熱が集まる。
「っ…、やっ！！」
ドン、と持てる力全てで天元を押し返す。彼は私からの拒絶を意識していなかったようで、弱々しい抵抗に目を丸くしてから一歩引いた。
「もう、もうっ、出ていってよ…っ！」
元くノ一だったというのに情けない。でも、泣いてしまうほど今はどうにも胸が苦しくて、どうしたらいいか分からなかった。
顔を覆って涙する私に「…悪かった」とそれだけ告げて天元は玄関から出て行った。
──────自分から離れたのに、未だ貴方を恋しいと思ってしまう自分に、心底腹が立った。
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あろま(プロフ) - 謎の桃さん» コメントありがとうございます！好きと言って頂けて嬉しいです！続編の方も是非ごらんください！ (2020年1月5日 17時) (
レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
謎の桃 - ぐっ…好きです…（死 (2020年1月3日 11時) (レス) id: 54222cb971 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - あろまさん» 分かりました。大丈夫です。 (2019年11月1日 9時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 零奈さん» リクエストありがとうございます！実弥ですね！実弥らしいお話ですね…！精一杯書きます！ (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 美桜さん» リクエストありがとうございます！煉獄さんのリクエスト嬉しいです！ですがすみません、夢主が柱という設定を普通の一般隊士にしたいです。ご了承ください…！ (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2019年9月25日 17時
