紫羅欄花:黒死牟 ページ36
*いわゆる事後表現ありです!
鬼殺隊には隊律違反なるものがある。
それは例外を除いて如何なる所以があろうとも侵してはならない鉄の掟だ。
それが"柱"であるなら、尚更である。
──────鬼、それも上弦と呼ばれる鬼。
その上弦の頂点に立つ鬼に、求婚されているとしたら、どうだろうか。
そうして、その鬼に惹かれつつあるとしたら、身を許してしまったとしたら、どうだろうか。
「ん、んん…」
ごそ、と動く気配に目が覚めた。うつらうつらとした意識の中、目覚めなければと瞼を開けると六つ目が此方を覗いていた。
「起こしてしまったか…、すまん」
「いいえ、気にしないで」
身体を起こそうとすると、はらり、被っていた布団が落ちてしまった。「風邪を引いてしまう」と黒死牟は直ぐに布団を掛けて、布団越しに腰をするりと撫でる。
「辛くは…ないか」
「少し痛いかも」
微かに腰に響く痛みにそう言えば、黒死牟は私を腕の中に納めて労わるように直に腰を擦る。そこに全くいやらしさはなくて、寧ろ真っ直ぐな愛情があった。
「会うのが久しかったからな…許せ」
「ふふ、そうね…、久しぶりだった」
寄り添う姿はきっと何処にでもいる夫婦の筈なのに、私たちの間にそんなものはない。許されない。
どうしてこの男は鬼で、私は人間で。
さらには、私は鬼殺隊員で、その中の最高位に就く柱なのだろうか。
初めて会ったのは2年前。私にはずっと前のように思えても、500年近く生きている黒死牟にとってはつい最近の事だろう。
刀を構えて出会した私に、なんと一目惚れをしたというのだ。
私の元に現れては散々断る私にめげず、毎度毎度求婚してくる黒死牟に呆れつつも何処か心惹かれていたとき。
丁度私の隊が鬼に奇襲を掛けられ、私以外全滅した。喰われそうになる直前、鬼を滅した黒死牟の姿は、まさに侍の勇ましい姿で。
──────私はその瞬間、この男に恋をしてしまったのだ。
時計を見ればもう朝方4時であった。
もうじき朝になる。それまでに本部へ戻らなくては。
名残惜しさを覚えながら「もう行かなくては」と黒死牟の腕を解こうとするも、彼の力がそれを許さない。
「まだ…良いだろう。…行くな」
掠れた声で囁かれてしまえば、それだけでもう私の意志は揺らいでしまうのだ。
あぁ、このままここにいたい。腕の中にいたいと、そんなことを願ってしまう。
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あろま(プロフ) - 謎の桃さん» コメントありがとうございます!好きと言って頂けて嬉しいです!続編の方も是非ごらんください! (2020年1月5日 17時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
謎の桃 - ぐっ…好きです…(死 (2020年1月3日 11時) (レス) id: 54222cb971 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - あろまさん» 分かりました。大丈夫です。 (2019年11月1日 9時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 零奈さん» リクエストありがとうございます!実弥ですね!実弥らしいお話ですね…!精一杯書きます! (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 美桜さん» リクエストありがとうございます!煉獄さんのリクエスト嬉しいです!ですがすみません、夢主が柱という設定を普通の一般隊士にしたいです。ご了承ください…! (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あろま | 作成日時:2019年9月25日 17時