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行き交う人々にジロジロと見られながら担がれ、連れていかれるのは羞恥の極みだった。
「天元…っ、降ろして!」
「おめぇいつから呼び捨てするようになった?旦那様だぞ?」
お願いするときは敬語だろ、と軽口を叩きながら私のお尻もぺちん、と叩いた。思わず「ひゃう」と言ってしまうと愉快そうに天元…否、天元様は笑った。
「て、天元様、お、降ろして…ください」
久しぶりに敬語を使うのがなんだか気まずかった。敬語を外したのは勿論、私自身が嫌われるため。
縮こまる私を見て「嫁の頼みは聞かねぇとなぁ?」と満足そうに笑うと私を降ろしてくれた。
しかし自由なのも束の間。私の手をぎゅっと握った。
「…!」
「A逃げるかもしれねぇからな。握っとくぜ」
正に"してやったり"の顔。天元様は「ゆっくり話そうぜ」と街とは反対の方向へと歩を進めていった。
連れてこられたのはほんの小さな丘の上だった。街全体が見下ろせる穴場の場所である。
芝生の上に腰を降ろすと天元様は自分の隣を促す。恐る恐る座ると酷く愛おしげに目を細めてから空を見上げた。
「地味な場所だが、派手な空と夜景が見られるもんだから気に入ってんだ」
「そう、なんですね」
天元様の言葉に見上げると、彼は隣で空を見上げていた。
白磁にも似た、銀色の髪の毛がなんとも美しい。天元様の容姿だけでなく、心も広く逞しく、美しい様子を見ているだけで胸がとくとくと高鳴る。
見蕩れているのが気づかれてしまうわ、とそう思い、目を逸らそうとする私の手に、するり。細長い指が絡まる。
そのままきゅ、と手の甲を包み込むように乗せると、天元様は不安げにゆらゆらと揺らした瞳でじっと見つめた。
「…話してくれねぇか、何故俺と縁を切りてぇのか」
いつもいつも気を張って避けてきた話に息が詰まりそうになる。
私が本音で話すと言うことは、心が天元様を初めとする皆様に"自分の汚い心を"教えるということである。
「…私を嫌いにはなりませんか?」
──────不安になった。雛鶴さんたちお嫁さんに対して考えている事を思い返して、息が詰まりそうになった。
そんな私に天元様はキョトン、としてからぎゅっと手を握った。
「なるかよ。自分の嫁だぜ。地味な心配なんかすんな。ド派手に言ってみろよ」
抱擁力のあゆ天元様の言葉と笑みにじんわり心が温かくなって。私はポツリポツリと心のうちを語りだした。
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あろま(プロフ) - 謎の桃さん» コメントありがとうございます!好きと言って頂けて嬉しいです!続編の方も是非ごらんください! (2020年1月5日 17時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
謎の桃 - ぐっ…好きです…(死 (2020年1月3日 11時) (レス) id: 54222cb971 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - あろまさん» 分かりました。大丈夫です。 (2019年11月1日 9時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 零奈さん» リクエストありがとうございます!実弥ですね!実弥らしいお話ですね…!精一杯書きます! (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 美桜さん» リクエストありがとうございます!煉獄さんのリクエスト嬉しいです!ですがすみません、夢主が柱という設定を普通の一般隊士にしたいです。ご了承ください…! (2019年10月31日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あろま | 作成日時:2019年9月25日 17時