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雨と前世の記憶 ページ31

杏寿郎はそれから書物を再び書庫から引っ張り出して"煉獄杏寿郎"について調べ始めた。


彼の直筆の手紙や書類や日記など様々出てきたが、どれを読んでも杏寿郎は思い出せない。


彼の隊服や持ち物を探し出してこの目に見ても、鳩尾の傷跡が痛くなるだけだった。





「俺は確かに生まれ変わりの筈なんだ…!」





杏寿郎は蹲りながら胸元から写真を取り出した。以前和泉屋で貰った仲睦まじく寄り添う煉獄杏寿郎とAの写真である。


その煉獄杏寿郎の姿はもうほとんど杏寿郎と背丈も体格も同じである。





「どうして…、どうしてAを思い出せない…」





杏寿郎は歯がゆかった。藤子から記憶に繋がるような事も聞いた。それなのに思い出せない。救えるはずのAに手を差し出すことが出来ない。



もう、待ち続けるAを成仏させてやらねばならないというのに。


こんな話をAにしたらそれこそ「からかわないで」と怒るだろう。また、家族に相談しても信じて貰えないのも目に見えている。



「情けない!俺が頑張るしかないのだ!」



杏寿郎はパン、と思い切り両頬を叩いて気合いを入れた。頬はヒリヒリと熱くなり、自目が覚めたような感覚になる。


前世の事など思い出せないのが普通だ。それを思い出そうとしているのだから苦労するに決まっている。




「…よし!」





杏寿郎はすぅ、と深く呼吸をして立ち上がった。手にしていた二人の写真に頷いて大切にまた仕舞い直した。









杏寿郎は等々18歳になった。高等学校で相変わらずの高成績を取っていた為、教師から大学を勧められた。


しかし杏寿郎は父親の剣道場を継ぎたいという意思があった。ちょうど進路を決めかねているそんな時である。


またあの雨の日が来た。


傘を持って杏寿郎はあの民家の前へと向かう。杏寿郎は矢張り前世の記憶を思い出せないでいた。そればかりか鳩尾の傷跡ばかりが痛むのだ。そして毎日両親に気づかれないように隠し通す日々。


ふぅと息を吐くとちょうど霧の中にAの姿が見えてきた。今日もいつもの様に傘を手に立っている。


杏寿郎が声をかけるより先にAが手を上げて「杏寿郎」と手を振る。


杏寿郎も「おはよう」と手を振り返して隣に並んだ。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 鬼滅 , 煉獄杏寿郎   
作品ジャンル:アニメ
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あろま(プロフ) - ネコ2世さん» コメントありがとうございます!コメント遅くなってすみませんでした…!今までで1番と言って頂けて嬉しいです!こちらこそ読んで下さり本当にありがとうございました! (2019年11月15日 18時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
ネコ2世 - 完結おめでとうございます!最後、主人公と煉獄さんで現世で再会出来て本当に良かったです!今まで様々な夢小説を読んできましたが、一番好きな作品です!書いてくださりありがとうございます! (2019年11月2日 20時) (レス) id: 6d89e33ad2 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - ukiさん» コメントありがとうございます…!丁寧で素敵なお褒めの言葉光栄です…!そう言って頂けて本当に嬉しいです!これからもよりよい作品が作れるように尽力していきます! (2019年10月25日 19時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
uki(プロフ) - 完結おめでとうございます。ただただ、最高の一言につきます。他作品も読ませて頂いておりますが、あろま様の文面が繊細で自然と涙が溢れておりました。自分自身が清くなれた気がします。これからも応援させて頂きます。ありがとうございました。 (2019年10月25日 1時) (レス) id: b46c65ea42 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 仍さん» コメントありがとうございます!読んで頂いた上に素敵なコメント嬉しいです…!私もこのコメントに幸せな気持ちになってます…!これからも頑張ります! (2019年10月20日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あろま | 作成日時:2019年9月3日 16時

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