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雨と"御縁" ページ27

かこん。


鹿威しが石を叩く。


小鳥の囀る天気の良い日に杏寿郎は着物で席に着いていた。


「杏寿郎、お前なら大丈夫だろうが、失礼のないようにな」


「勿論です父上」


そう返事をした時であった。料亭の女将が「失礼します」と扉を開けた。



「帳様のお見えです」



すす、と鶴が描かれた襖が開かれると着物を着た男性と振袖を着た若い女が現れた。


菊の花が漫勉刺繍された京紫色の振袖を着た凛とした女性であった。まるでその佇まいは杏寿郎の母そっくりである。


父と帳は懐かしの挨拶を交わすと、杏寿郎の番となった。



「煉獄杏寿郎と申します。本日はどうぞよろしくお願い致します」



深々と頭を下げると帳は「昔の槇寿郎によく似ているではないか」と微笑んだ。



「帳藤子と申します。本日はよろしくお願い致します」



静かにお辞儀をする藤子は昔ながらの美人であった。色白の肌に細めの瞳。小さな唇には紅が引かれている。


それからすぐに帳と父は部屋を後にした。なんでも「後は若い二人で」とのことであるらしい。


ぴしゃ、襖が閉まると様子を見届けた杏寿郎に藤子は声をかける。


「そんなに固くなさらないでくださいな」


「すみません、少し緊張しているのです」


やっと言葉を発した藤子に笑みを零すと、藤子はほんのりと目を細めた。




「…疑問に思われなかったのですか?私と杏寿郎様は幼い頃に1度しか会ったことがございません」




藤子の言葉に杏寿郎は茶を飲む手を止めた。





「…はい、正直思いました。何故貴女が私を、と」


「──────その理由は貴女もご存知ではないのですか?」





色無地と同じ京紫色の瞳が杏寿郎を射貫く。涼しげだが、意志のある強い瞳に杏寿郎はたじろんだ。





「…お話致しましょう。私と貴方の"御縁"のお話を」





かこん──────鹿威しが乾いた音を響かせた。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 鬼滅 , 煉獄杏寿郎   
作品ジャンル:アニメ
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あろま(プロフ) - ネコ2世さん» コメントありがとうございます!コメント遅くなってすみませんでした…!今までで1番と言って頂けて嬉しいです!こちらこそ読んで下さり本当にありがとうございました! (2019年11月15日 18時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
ネコ2世 - 完結おめでとうございます!最後、主人公と煉獄さんで現世で再会出来て本当に良かったです!今まで様々な夢小説を読んできましたが、一番好きな作品です!書いてくださりありがとうございます! (2019年11月2日 20時) (レス) id: 6d89e33ad2 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - ukiさん» コメントありがとうございます…!丁寧で素敵なお褒めの言葉光栄です…!そう言って頂けて本当に嬉しいです!これからもよりよい作品が作れるように尽力していきます! (2019年10月25日 19時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
uki(プロフ) - 完結おめでとうございます。ただただ、最高の一言につきます。他作品も読ませて頂いておりますが、あろま様の文面が繊細で自然と涙が溢れておりました。自分自身が清くなれた気がします。これからも応援させて頂きます。ありがとうございました。 (2019年10月25日 1時) (レス) id: b46c65ea42 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 仍さん» コメントありがとうございます!読んで頂いた上に素敵なコメント嬉しいです…!私もこのコメントに幸せな気持ちになってます…!これからも頑張ります! (2019年10月20日 22時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あろま | 作成日時:2019年9月3日 16時

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