宇宙まで、貴方と。 ページ38
その瞬間啓悟はゴーグル越しの目を見開いた。私はずっとそのつもりだったのに、彼は自分の元から駆けていくシンデレラを見つめる王子様みたいな顔をしてる。
「楽しかったなぁ、短かったけどすごく私にとっては長かった。
私、啓悟と出会えて良かった。こんなに浮かんで飛べるなんて、思ってなかった。
幸せをくれて…ありがとう」
想いを伝えているうちに、視界が滲んできた。胸の奥から何かがせり上がってきて、喉までやってきて、涙を押し出してしまう。
迷子のように零れて夜空に落ちていく涙を憎んだ。辞めてよ、面倒くさい女にさせないで。泣いたら啓悟が困っちゃうよ。
悲しみが私を包み込んで離してくれない。泣いちゃえ、駄々捏ねちゃえ、と本能が囁く。
感情を押し殺す事が出来ない私は、途端にぐん、と重くなった。落下していく私に、啓悟は──────。
繋いだ手を引き寄せて、腕の中に抱きしめた。
近距離に啓悟の端正な顔があって、涙が引っ込んだ一瞬。
「Aが好き」
切羽詰まった声で、啓悟はそう強く言った。
「──────え」
「俺は離れたくない。Aが言ったって離すつもりなんかない。
これからも一緒にいよう。
──────俺が今よりずっと、ずっと遠くまで連れていくから」
抱き締める力が強まって、黄金色の瞳が、この世界の中で私だけを、見つめていた。
「…けいご、っほん、とう？」
「本当だよ、この先ずっと、Aを導くのは、その手を引くのは俺がいい。
好きだ、心から」
叫びにも似た告白に落下していた身体がぐんぐん浮き始めた。凄い勢いで浮かび上がりながらも、涙は止まらない。
「わたじ、わたし…っ、ほんとに、重いんだよ？」
「何言ってんの、重くないし、強いて言うなら俺の方が重いよ」
「ふつうだよ、ふつうなんだよ？けいごの隣に、いていいの？」
「普通じゃない。俺にとっては特別だよ。特別な、ただ1人の女の子。
だって、傍にいて温かくて、心地よかった。
いていいじゃなくて、いてよ。ずっと、隣で笑ってて」
好き、と悪戯に笑う彼に、私は必死に笑った。涙でぐちゃぐちゃの顔で。
どんどん上へ上へ浮かんでいきながら啓悟の背中に腕を回した。
「…ねぇ啓悟、このままだと大気圏突入しちゃうよ」
「はは、どんだけ嬉しかったの」
「宇宙まで行けそう、私」
そんなことを言って、2人顔を見合わせて、笑った。
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花帆 - 一気に読ませて頂きました！お互い一途な夢主さんとホークスにずっとドキドキして面白かったです！！ チャートも面白かったです♪ 続編も楽しみにしております(*´ω｀*) (2020年4月26日 4時) (
レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 鈩さん» コメントありがとうございます！いえ、私こそ遅くなってすみません…！そんな細かいところまで褒めて頂けて光栄です…！こちらこそ読んでくださりありがとうございました！ (2020年3月28日 23時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
鈩 - 完結＆続編おめでとうございます！(遅れてすみません…)文章や、単語一句一句にドキドキしてしまいました…！素敵な作品ありがとうございます！ (2020年3月11日 0時) (レス) id: 4f2f6e9221 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - くろかはさん» コメントありがとうございます！私自身実は夢主の個性気に入ってます(笑)浮き沈みするの可愛いですよね！とてもコメント嬉しかったです！ (2020年3月10日 15時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
くろかは(プロフ) - 主人公の個性がなんとも言えず可愛らしい…(すき) (2020年3月4日 20時) (レス) id: e34a9a5e9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2019年10月22日 15時
