膨らむ ページ34
じんぐるべーるじんぐるべーると歌を歌いながら私は解いた卵をフライパンの上に落とした。
いよいよ日付は変わり12月24日。誰もが幸せな気持ちになる魔法の日がやってきた。
朝から真新しいツリーの電球を付けて、私はふわふわ宙に浮かびながら食事の支度をする。
啓悟はいない。「仕事入ったから行ってくる」と置き手紙がしてあったから夜中に出ていってしまったのだろう。
でも私にとってそれは有難かった。こんな浮かれた姿を啓悟に見られるのは恥ずかしかったし、何より今は顔を合わせるのに心臓が一つじゃ足りない。
「明日の夜、かぁ…」
最初はクリスマスに予定を入れていなかった事を後悔していたけれど、今では自分で自分を褒め回したいほどだ。人間って勝手だなぁ、なんて何処か他人行儀に思いながら半熟玉子を箸で掻き混ぜた。
ひらべったい玉子をグルグル回すとふわふわに仕上がって行った。ぷくぷく膨らみ黄色に色づくスクランブルエッグに、自分が浮かべているだろう笑顔を思い浮かべた。
向かい風を寒いなんて思わなくなったのは、Aと出会ってからだ。
恋人にクリスマス前に振られてヤケになって暴走した敵を確保し、警察に預けて事務所に戻る途中、少し疲れを感じて俺はビルの屋上に舞い降りた。
警察の人に貰った、少し温くなったブラックコーヒー片手にスマホを見る。
Aから何も連絡はない。少しだけ「大丈夫？」とか「何時に帰ってくるの？」とか聞いて欲しい気も…する。
信頼されていると言えばそれはそれで嬉しくて、でも反対にもう少し気にかけて欲しい。
「俺の事だけしか考えられなくなればいい」
その無邪気で真っ直ぐな目に映るのは、俺だけでいい。そう願ってしまうほど、俺は彼女に"ぞっこん"らしかった。
「…はよう帰ろ」
早く帰って、イヴとクリスマスくらい彼女と過ごしたい。あのときは格好つけて"夜"とか言ってしまったけれど、昼間だっていつだって、傍にいたい。
そう呟いて立ち上がったとき、タイミング悪くスマホが振動する。HNの情報だ。
見れば博多市内の街中で凶悪敵が出現したとかなんとか。
「はー…、最悪」
疲労とイライラで低い声が出た。自分でもビックリだ。私的感情を仕事に持ち込むのはいけないとか昔ならったけど、そんなの知るか。
「俺の邪魔するのは許さないよ」
スマホをしまい込んで俺は翼を広げてビルから飛び立った。
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花帆 - 一気に読ませて頂きました！お互い一途な夢主さんとホークスにずっとドキドキして面白かったです！！ チャートも面白かったです♪ 続編も楽しみにしております(*´ω｀*) (2020年4月26日 4時) (
レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 鈩さん» コメントありがとうございます！いえ、私こそ遅くなってすみません…！そんな細かいところまで褒めて頂けて光栄です…！こちらこそ読んでくださりありがとうございました！ (2020年3月28日 23時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
鈩 - 完結＆続編おめでとうございます！(遅れてすみません…)文章や、単語一句一句にドキドキしてしまいました…！素敵な作品ありがとうございます！ (2020年3月11日 0時) (レス) id: 4f2f6e9221 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - くろかはさん» コメントありがとうございます！私自身実は夢主の個性気に入ってます(笑)浮き沈みするの可愛いですよね！とてもコメント嬉しかったです！ (2020年3月10日 15時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
くろかは(プロフ) - 主人公の個性がなんとも言えず可愛らしい…(すき) (2020年3月4日 20時) (レス) id: e34a9a5e9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2019年10月22日 15時
