「呼んで。」 ページ32
心臓って、こんなに大きな音が鳴るんだ。
そんな風に思ったかもしれない。頭の天辺から爪先に至るまで、まるで心臓になってしまったかのようにドクンドクンと高鳴る鼓動が耳にまで響く。
ドアノブを掴む手が汗ばむ。頭も沸騰しそうなくらいに熱い。
「ねぇ」
間を置いてホークスの低い声が呟いた。何処か湿っぽくて、官能的な囁きに身体が疼く。ホークスの吐息が更に耳に近づいて、顔の横に彼のくせっ毛が掠めて、彼の頬を伝った汗が私の肩に落ちた。小さく「ぁ、」と声を漏らすと、ホークスは微かに喉仏を鳴らしてドアを押さえる力を込める。
「呼んで、本名で。Aの口で」
懇願にも似た声音に喉の奥が一気に乾いていく。
今すぐ逃げたい。もう全身熱くて、息もなんだか苦しい。それなのにこの男は、この鷹は私を逃がそうとはしない、逃がさない。
今この瞬間は、私が泣いても喚いても逃がしてくれないだろう。そう感じさせるほど背後の彼の目線が真っ直ぐで、熱くて、情を持っていて。
「たかみ」
なんとか乾いた口から絞り出したのは苗字。呼んだからもう離して、そう言いたいのに言葉は出ない。
「俺の名前。…啓悟って、呼んで」
早く、早くと急かすようにホークスの吐息が更に熱く、荒くなっていく。
「けいご、けいご」
なんだか泣きそうになって、上ずった声で二回繰り返すと、ホークス…、否、啓悟はごくりと息を呑んでから小さくふ、と微笑んだ。
「…そう、それでいい」
「それでよかよ、A」と安堵したように息を吐いて肩に顔を埋める啓悟に。
私はもっと、もっと触れて欲しいと。
そんな熱ある欲求を自然のうちに、胸がきゅうきゅうと締め付けられるほど。
持ってしまっていたのでした。
＊中村悠一ボイスで再生してください。(鼻血用ティッシュを傍に置く事を推奨します)
雰囲気ぶち壊してすみません、ふざけました(反省の色なし)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 873人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花帆 - 一気に読ませて頂きました！お互い一途な夢主さんとホークスにずっとドキドキして面白かったです！！ チャートも面白かったです♪ 続編も楽しみにしております(*´ω｀*) (2020年4月26日 4時) (
レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 鈩さん» コメントありがとうございます！いえ、私こそ遅くなってすみません…！そんな細かいところまで褒めて頂けて光栄です…！こちらこそ読んでくださりありがとうございました！ (2020年3月28日 23時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
鈩 - 完結＆続編おめでとうございます！(遅れてすみません…)文章や、単語一句一句にドキドキしてしまいました…！素敵な作品ありがとうございます！ (2020年3月11日 0時) (レス) id: 4f2f6e9221 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - くろかはさん» コメントありがとうございます！私自身実は夢主の個性気に入ってます(笑)浮き沈みするの可愛いですよね！とてもコメント嬉しかったです！ (2020年3月10日 15時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
くろかは(プロフ) - 主人公の個性がなんとも言えず可愛らしい…(すき) (2020年3月4日 20時) (レス) id: e34a9a5e9f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あろま
| 作成日時：2019年10月22日 15時
