役に立ちたい ページ23
エレベーターに乗り込み、夕飯の食材を買わなくてはとお財布を確認するとかなり寂しい状態になっていた。
「あぁー、これじゃあ買い物どころかタクシーも乗れない」
ふとこの間のホークスのやり取りを思い出す。二十歳前後の女性の誘拐事件。でもマンションまでの帰り道は人通りも車通りも多いから何かあっても大丈夫だろう。
私は自分に"大丈夫だ"と言い聞かせて歩き出した。華やかに装飾された街中を、コツコツ鳴らせて歩く。お洒落な外装のお店に気を取られながらその角を曲がろうと足を差し掛ける。
──────こつ。
「…え？」
気づけば薄暗い路地裏にいた。やけに靴音か響いたのは、周りに誰もいないから。
入り組んだ路地裏に、私はサッと顔を青くする──────一体どうして？
恐怖でぐん、と身体が重くなり地面がめり込む。
そんなの答えは一つ。これは誘拐犯の個性だ。屹度対象相手を移動させる転送個性。
とりあえず逃げなくてはと出口を探そうと振り向く──────が、そこには見知らぬ男がいた。
彼から唯一逃げ延びた被害者女性の証言に基づく似顔絵通り、優しげな目元に柔和な笑顔。何処にでも居そうな男の人なのに、充分恐怖じみたものを感じられる。
「やぁ、初めまして」
「…っ」
「おや、返事がないねぇ。良くない、良くないぁ」
独り言を言いながら1歩ずつ近づいてくる。私は恐怖で身体が重くなり、半分程地面に埋まりこんでいる状態だった。
「へぇ君重くなる個性なんだね。でも
──────そんなの分かってるよ馬鹿野郎。
そうだ、私の個性は没個性。それなのに、今思えばホークスは「面白い」って言ってくれた。私の個性も、私のことも認めてくれた。
「──────なんの役にも立たないかは私が決める！！」
思わず、感情に任せて男に飛びかかった。体重をかけてやると一気に男は地面に埋まり込む。
「なっ…！」
「何人の女の人が、アンタのせいで…っ！」
許せない──────そう思ったのは、多分私の良心だけじゃなくて。この誘拐犯が元彼に似ていたから。
…これは不純だし恥ずかしいから内緒だけど。
ホークスが私を救ってくれたみたいに、誰かの救いになりたかった。
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花帆 - 一気に読ませて頂きました！お互い一途な夢主さんとホークスにずっとドキドキして面白かったです！！ チャートも面白かったです♪ 続編も楽しみにしております(*´ω｀*) (2020年4月26日 4時) (
レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 鈩さん» コメントありがとうございます！いえ、私こそ遅くなってすみません…！そんな細かいところまで褒めて頂けて光栄です…！こちらこそ読んでくださりありがとうございました！ (2020年3月28日 23時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
鈩 - 完結＆続編おめでとうございます！(遅れてすみません…)文章や、単語一句一句にドキドキしてしまいました…！素敵な作品ありがとうございます！ (2020年3月11日 0時) (レス) id: 4f2f6e9221 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - くろかはさん» コメントありがとうございます！私自身実は夢主の個性気に入ってます(笑)浮き沈みするの可愛いですよね！とてもコメント嬉しかったです！ (2020年3月10日 15時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
くろかは(プロフ) - 主人公の個性がなんとも言えず可愛らしい…(すき) (2020年3月4日 20時) (レス) id: e34a9a5e9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2019年10月22日 15時
