不幸は気まぐれにやってくる ページ1
あ、浮気された。
そう察するのは早かった。玄関で自分のものでは無い女物の靴を見つけてしまったから。
部屋の中から聞こえてくる艶めき声を、聞いてしまったから。
2年半も住んだ家なのに、馬鹿野郎と殴り込みに入っていく勇気は無かった。
私はそのままバッグを抱えてマンションを後にした。
『浮気してたんだね』
そうメッセージを送ると、いつも4時間経ってからしか付かない筈の既読がすぐについた。
返す言葉もないだろう、と鼻で笑っているとピコン、と私の心境とは真反対の軽快な音が鳴る。
『お前さ、重いんだよ』
「──────こんッのクソ野郎が！！」
怒鳴った。思い切り怒鳴って片手のスマホをぶん投げようと腕を振るが、スマホを投げても仕方ない。
私の怒鳴り声にガラリと背後では窓が閉まる。
はぁ、とため息を付いてベンチに座っているとベンチがべきべき音を立て始めた。
あぁ、いけない。そう思って私は情けなくも地べたに座り込む。
ずん、とその瞬間から自分の身体が重くなるのを感じた。
個性、重石。
文字通り石のように身体が重くなる個性。特に利点もなにもない、言葉を悪くするなら"没個性"だ。
しかもそれは気分次第。心が重く沈めば沈むほど自然と身体も重くなって沈んでいく。
それは反対もある。嬉しくて、幸せで、心が軽くなればなるほど身体も軽くなってプカプカと宙に浮くことができる。
──────あぁ、あの時は毎日浮かんでたなぁ。
今はクソ野郎である男は、なんと酷なことか、初めての彼氏だった。恋愛運がとことんない私にとっては、一生のうちの最大の奇跡のようで。
1日に１回は電話をして、2週間に１回は必ずデートして。
彼が福岡に転勤が決まれば私も会社を辞めて福岡について行った。
毎日手を抜かずにお弁当を作って、ご飯も外食なんて滅多にしなくて。
誕生日も記念日も忘れることなくちゃんと毎年祝った。
なのに、"重すぎる"だなんて。
「好きだから、好きだから尽くしてたのに…」
思えばいつだって彼は笑顔だった。
でも、その笑顔は"本当の"笑顔だった？瞳の奥にはいつも、きっと呆れと嘲笑が混じっていたのではないか。
そう思うと少なくとも自分にも怒りが湧いてきた。どうしてそんな事にも気づかなかったんだろう。
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花帆 - 一気に読ませて頂きました！お互い一途な夢主さんとホークスにずっとドキドキして面白かったです！！ チャートも面白かったです♪ 続編も楽しみにしております(*´ω｀*) (2020年4月26日 4時) (
レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - 鈩さん» コメントありがとうございます！いえ、私こそ遅くなってすみません…！そんな細かいところまで褒めて頂けて光栄です…！こちらこそ読んでくださりありがとうございました！ (2020年3月28日 23時) (レス) id: 0b00b944d7 (このIDを非表示/違反報告)
鈩 - 完結＆続編おめでとうございます！(遅れてすみません…)文章や、単語一句一句にドキドキしてしまいました…！素敵な作品ありがとうございます！ (2020年3月11日 0時) (レス) id: 4f2f6e9221 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - くろかはさん» コメントありがとうございます！私自身実は夢主の個性気に入ってます(笑)浮き沈みするの可愛いですよね！とてもコメント嬉しかったです！ (2020年3月10日 15時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
くろかは(プロフ) - 主人公の個性がなんとも言えず可愛らしい…(すき) (2020年3月4日 20時) (レス) id: e34a9a5e9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2019年10月22日 15時
