＊＊＊ ページ26
振り向けばスーツを着た男の人数名と艶やかな服装をした女の人がいた。
「君大丈夫？迷子？」
高い背の割には穏やかな声に、心底ホッとして私は強ばっていた体から力が抜けていくのを感じた。
「迷子というか…、今まで敵に閉じ込められてて」
「あらぁ、大変だわ」
「警察に連れて行ってあげよう、着いておいで」
「…！ありがとうございます！」
歩き出す人達の後ろについて歩き出す。
初めは身につけている服飾品から危ない人なのかと思ったが、親切だ。
(女の人もいるし、大丈夫だ…)
やっと助かるんだ、と安心して歩いていると──────ビルの突き当たりに辿り着いた。
「……え？」
サッと血の気が引いていくのがわかる。
振り向いた途端、男が二人回り込んできた。
「随分君、用心しないんだねぇ」
先程まで柔和だった男は一変。下卑た笑みを浮かべている。
「こんな純粋で阿呆な子いるのね」
「連れていけば"色々"使えるだろ？」
笑みを浮かべて見下ろす女の人。意味深な発言をする男の人──────
(やだ、うそ、こんな)
「…って訳だからさ、お嬢ちゃん」
ジリジリと男が近づいてくる。
後ずさっても、後ろにも人が待ち構えてる。
(こんなの──────)
──────そのとき、あの場所にいた時のことを思い出した。
ちょっと可笑しいけど、話を興味深そうに聞いてくれたトガちゃん。
元気がない私に手品を見せてくれたMr.コンプレス。時々こっそりオレンジジュースをくれた黒霧さん。
私の髪の毛を偶に弄りに来たマグネさん。本をくれたスピナーさん。
よく笑わせてくれたトゥワイス。目障りだと言いながらも、1度だけチョコレートをくれた死柄木さん。
そして──────寒い日に自分の分の毛布を掛けてくれた、荼毘。
『…おやすみ、A』
酷く愛おしそうに、私を呼んだあの人。
(あ──────)
目の前まで、男の手が近づいてくる。
触れる、その1歩手前に。
「──────失せろ、ゴミ共」
そんな地を這うような声音と共に、辺りを炎が飲み込んだ。
──────青い、青い炎が。
悲鳴が上げながら逃げ出す人たちを無慈悲に追い詰めて燃やしていく。
二度目になる地獄の光景を、私は呆然と見詰めていた。
そうして、炎が落ち着いて、ぱちぱちと音が鳴る中、歩いてくる黒い影。
「──────荼毘…」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 216人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あろま(プロフ) - あいねさん» コメント気づきませんでした…！コメント感謝です！何回も読み返して下さるなんて…！この作品も読んで下さって嬉しいです！いつも感謝感激です！ (2019年12月29日 7時) (
レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
あいね - あろまさんのヒロアカ短編集はどれも最高なんですね、「求めて、求められて」シリーズはもう何回も読み返して全てを読みきった感で居たら………私の馬鹿！！←何でこの作品を見つけてなかったんだ……？見つけた時驚きで数�冂靴佑泙靴拭�← (2019年12月16日 22時) (レス) id: 59d3daabe9 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - きりんの木さん» コメントありがとうございます！轟くんはヤンデレになるとあんな感じになると思うんですよね…。応援のお言葉も嬉しいです！これからも頑張ります！ (2019年9月2日 17時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
きりんの木(プロフ) - コメント読みました、凄く嬉しかったです。あろまさんもゾッとしながら書いてたんですね（笑）そうですか…終わっちゃうんですね…寂しいです…。再開の日を心待ちにしています。これからも頑張ってください。かげながら応援しています！ (2019年9月1日 16時) (レス) id: 8f4326a47e (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - きりんの木さん» 沢山お褒め頂き感謝です！リクエスト大変嬉しいのですが、実はこのシリーズを一旦終わりにしようと考えておりまして…。話数が残り少ないので書くのが難しいと思われます…。ごめんなさい…。もしまた再開した時であれば受け付けられます！ご了承くださいませ…！ (2019年9月1日 8時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あろま
| 作成日時：2019年6月9日 23時
