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「すみません…、鋭児郎います？」
ひょっこり、あれから暫くしてまた彼女は現れた。
また手にはトートバッグを持っている。
ちょうどパトロールから帰ってきていた俺は対応しようとする事務員さんに「応接室に通してください」と指示をした。
生憎ファットガムも切島くんもパトロールがまだ終わらないらしく、数分経っても現れない。
応接室に行くと、出された粗茶を飲みながら水瀬さんはキョロキョロしていた。
「ごめんなさい、お邪魔してしまって」
「いや…、いいんだ。もしかして切島くんまたお弁当…」
そこまで言うと、彼女は緊張していた面持ちをふにゃりと緩ませた。
「そうなんです…、また忘れたんです、鋭児郎」
聞いた話によれば、切島くんがファットガム事務所に就職が決まると、彼女は「ついていく！」と言ったらしい。
だから二人は同居…していることになる。
分かっていたことだが、改めて再確認すると胸にくるものがあった。
(──────胸が痛い。チクチクする)
こんな感情、知らない。こんな苦しみ、知らない。
誰かに何か言われた訳でも、された訳でもないのに。
水瀬さんと切島くんが恋仲で、周りから見てもお似合いで、幸せそうにしているのを見ると、気分が悪くなる自分がいる。
(俺は、水瀬さんのことが──────)
認めたくない、認めても仕方の無い気持ちに名前を付けて、彼女の見上げた。
こんなドロドロとした感情を胸に秘めている俺の本性を露知らず、彼女は首を傾げる。
「どうしました？」
「いや…。切島くんいつも酔うと水瀬さんの話をするんだ」
言いたい言葉を飲み込んで、代わりに彼女が望む言葉を放つと、彼女は「え…」と目を丸くする。
実際、そうだった。
彼女がいるとは聞いていたが、偶に事務所のメンバーで飲みに行くと切島くんは惚気話を始める。
「本当に彼奴可愛いんすよ」「俺には勿体ない彼女なんです」
そう話す切島くんの顔はいつも穏やかで──────幸せそうだった。
その事を教えると、水瀬さんは見るからに嬉しそうな顔をしながら「ほ、本当ですか…？」と顔を覗き込んでくる。
またその微笑みに、胸が反応するのと同時に、チクリ、胸が傷んだ。
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あろま(プロフ) - あいねさん» コメント気づきませんでした…！コメント感謝です！何回も読み返して下さるなんて…！この作品も読んで下さって嬉しいです！いつも感謝感激です！ (2019年12月29日 7時) (
レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
あいね - あろまさんのヒロアカ短編集はどれも最高なんですね、「求めて、求められて」シリーズはもう何回も読み返して全てを読みきった感で居たら………私の馬鹿！！←何でこの作品を見つけてなかったんだ……？見つけた時驚きで数�冂靴佑泙靴拭�← (2019年12月16日 22時) (レス) id: 59d3daabe9 (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - きりんの木さん» コメントありがとうございます！轟くんはヤンデレになるとあんな感じになると思うんですよね…。応援のお言葉も嬉しいです！これからも頑張ります！ (2019年9月2日 17時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
きりんの木(プロフ) - コメント読みました、凄く嬉しかったです。あろまさんもゾッとしながら書いてたんですね（笑）そうですか…終わっちゃうんですね…寂しいです…。再開の日を心待ちにしています。これからも頑張ってください。かげながら応援しています！ (2019年9月1日 16時) (レス) id: 8f4326a47e (このIDを非表示/違反報告)
あろま(プロフ) - きりんの木さん» 沢山お褒め頂き感謝です！リクエスト大変嬉しいのですが、実はこのシリーズを一旦終わりにしようと考えておりまして…。話数が残り少ないので書くのが難しいと思われます…。ごめんなさい…。もしまた再開した時であれば受け付けられます！ご了承くださいませ…！ (2019年9月1日 8時) (レス) id: 3a55b14ac0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あろま
| 作成日時：2019年6月9日 23時
