八十二の雨粒 ページ37
竈門炭治郎の鬼連れ事件から半年後の柱合会議。前回お館様が顔ぶれの変わらないことを喜んでくださったことも懐かしい。
杏寿郎が死んで一回目の会議だ。
鴉から報告もないのでまさかと思ったが……九人しかいない。杏寿郎の後を埋める柱が生まれていない。ゆゆしき事態だ。
「若手が育つ前に死に過ぎる」
小芭内が言う。確かに、階級が上がる前に死んでしまう者が多い印象を受ける。
育手が最終選別へ行かせる時期を早めているのだろうか?隊士の熟成には時間がかかる。何故ならこのご時世、育手に会うまで刀など触ったことのない者がほとんどだ。
これが戦国時代なら剣士も腐るほどいたのだろうな。
「雨屋敷に来る死体も最近じゃ癸や壬……行っても庚辛ばっかりだ。戊とか己って実際あまり増えてないね」
「ヌルいねぇ、地味な判断違いで死ぬヤツが多すぎる。共同任務増やした方が良いんじゃねぇの」
「けれど仲間がいる安心で油断することもありますからね。それより血鬼術が分からない内に愚直に突っ込むのをやめさせた方が良いと私は思うのですよ」
「そんなヤツがいんのかよ。死に急いでんじゃねェんだからよォ……」
正直義勇とは顔を合わせたくなかったが、彼は基本的にあまり発言しない。ボーッとしている時の無一郎並みに静かだ。
行冥さんの数珠玉を擦り合わせる音の方が高頻度で聞こえる。
「そんな時だからこそ……柱の戦力は貴重だ。くれぐれも……油断しないように。鬼の活動が活発になっている」
「そういえば、最近育手を狙う鬼が多いって聞きました。育手は刀鍛治の里やここほど厳重に隠されていないし心配ですね……」
蜜璃の報告に驚いた。育手の減少は間違いなく鬼殺隊な縮小に繋がるが、一人一人に護衛をつけるほどの隊士数がない。
育手の多くは高齢だったり、戦えなくなって前線から引いた者。元鬼殺隊である以上、雑魚鬼くらいなら……という判断だったが。
たしかに、面倒な血鬼術持ちと当たれば厳しいな。
話し合いの結果、巡回地域が一部変更された。育手の多い地域を中心に。
お館様の体調がどんどん悪化しているのも気がかりだった。犬並みの嗅覚を持っていたら死臭にでも気付けたか。私に見える黒いモヤも同じくらいの力があるだろう。
お館様がもう長くないのは、目に見えて明らかだった。
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作者名:紅丸 | 作成日時:2019年8月2日 17時