七十八の雨粒 ページ33
自慢の石頭をぶつけて曰く糞爺を気絶させた炭治郎は千寿郎によって家の中にあげてもらった。
お茶を入れてもらい、静かに言葉を交わす。
煉獄杏寿郎という男の最期や、歴代炎柱の書。それはズタズタに裂かれていて何も読み解くことができなかった。
「わざわざ足を運んでいただいたのに、ヒノカミ神楽や父の言っていた日の呼吸について結構何も……」
「大丈夫です。自分がやるべきことはわかっていますので」
炭治郎は正座の膝上に拳を置いて真剣な顔をした。
もっと鍛練が必要だ。彼は舞いの手順を知るその神楽を使いこなせていない、体が追い付いていかない。
全集中の常中で体力が向上しても、それは徐々にであって急激な成長とはならない。
「……あの時、俺がもっと強かったら。
一瞬で……煉獄さんをたすけられるくらい強くなれる方法があったら……」
その背中に、あの一瞬に届く手があったなら、どんなに良いだろうか。
「ずっと考えていました。だけど、そんな都合のいい方法はない。
近道なんてなかった」
杏寿郎に出会った人間が、皆同じ思いを抱いている。不思議なほどに。Aも炭治郎も、決して暗い方に歩いていくことはなかった。
どんなに苦しく悔しく、惨めでも明るい方へ歩いていく。
「今の自分ができる精一杯で」と炭治郎は言った。
炭治郎は、いつか自分も杏寿郎のような柱になると千寿郎に向かって固く決意のこもったら言葉を伝える。
兄と同じように鍛練してきたにも関わらず日輪刀の色が変わらなかった千寿郎。本当は炎柱の控えとして実績を積まなければならなかった彼だが……きっと炭治郎がその思いも戦場に連れていってくれるのだろう。
「歴代炎柱の書は私が修復します。他の書も調べてみます。父にも……聞いてみて、何かわかったら鴉を飛ばします」
「そうだ、それから」と千寿郎は付け加える。
「炭治郎さんは今、水の呼吸とヒノカミ神楽、全く違う二種類の型を使っているわけですよね。全く別系統の動きを混ぜて全集中の呼吸に落とし込む方法なら、Aさんが詳しいかと思います」
「……Aさんが?雨柱の……?」
ここで出てくると思っていなかった名前に炭治郎は首を傾げる。千寿郎は頷く。
「Aさんは元々水の呼吸を自分流に突き技の雨の呼吸に加工した人ですが……適性は炎の呼吸にあったらしく、兄に習って呼吸を混ぜていたそうです。
もしかしたら、ヒノカミ神楽を全集中の呼吸に落とし込む方法を知っているかも」
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作者名:紅丸 | 作成日時:2019年8月2日 17時