六十五の雨粒 ページ20
十日もすれば、さすがに落ち着く。心の根本にはまだモヤモヤ苦しいものを残しても、平然としていられるようになった。
「それにしても竈門炭治郎、中々に問題児だぞ」
私はふむ、と筆を片手に唸った。
鬼を庇っていたことは、お館様が不問になされたから言及しないとしてもだ。
私の鴉に、伝達されていない細かい情報がないか詳しく調べさせたところ出るわ出る。
「同期と殴り合いの喧嘩……ふっかけたもう一人の方が問題アリな気はするが、それで彼は味方の肋を折っているな。少なく見ても一ヶ月は治療が必要な怪我。その間鬼殺ができないことを考えればこれは相当の罪だ。
何故報告されていなかったのか」
隊員同士の私闘罪、未報告罪、上官への不敬罪。
これはいけないな。大変よろしくない。更正の必要アリだ。
私は丁寧に一つの罪につき一枚、細かにしでかしたことの詳細と、雨屋敷への召集命令を書いた。
確か彼は今、しのぶが預かっていたはず。隠に頼んで、手紙は全て蝶屋敷へ運んでもらうことにした。
これくらいはお館様も許してくださるだろう。書いた内容は事実のみ。私は問題のある隊士を預かる権利がある。
別に決して職権を乱用してなどいない。
……柱でもない隊士の名前をしっかり覚えてしまったことに後悔しつつ、これもこれもあれもどれも竈門炭治郎のせいだ、と心の中で毒付いた。
……………。
「うわ、何だよそれ」と、炭治郎の隣のベッドで寝ていた同期の隊士、吾妻善逸が言う。
炭治郎が一つ一つ手紙を開けて読んでみると、そこには雨屋敷への召集令(要約)。
手紙を持って来たしのぶも一枚取って「あらまあ」と苦笑いした。
炭治郎は少し不安になった。先程村田が「あんなとこ行くもんじゃない」と行っていた雨屋敷。まだ完調もしていないが、いかなければならないだろうか……。
「竈門君、応じなくて良いですよ」
「えっ。で、でもこれ、柱直々の命令ですよね。無視して大丈夫ですか……?」
「竈門君は私がお預かりしている状況ですから。柱の中に序列はありません、Aさんが私の管理下にある隊士を連れていきたいなら許可がいるのですよ」
「なるほど……」
「でも気を付けた方がいいですよ。彼女、人にも鬼にも人一倍恨みの強い人ですから。無闇に襲うことは流石にないでしょうけど、こういうことは今後もあるかと」
悪い人ではないんですけどね。としのぶは付け加えた。
163人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:紅丸 | 作成日時:2019年8月2日 17時