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Aがハーツラビュル寮に住むことが決まった際、ある約束事をした。
それは他の生徒と揉め事を起こさないこと。僕はその時から、少しずつ彼女が学園内で噂され始めていることを知っていた。
この学園の生徒の事だから、彼女に必要以上に絡もうとする輩が現れるのは明白だ。彼女に非はなくとも、他寮の生徒と揉めてハーツラビュル寮の風紀が乱れるのは困る。だから安易に挑発には乗らないことを僕はAに言って聞かせた。「…もう慣れましたっ!」
そう言ってあっけらかんと笑ってみせた彼女は、本当に日々学園中から降り注がれる悪口雑言に慣れていたのだろうか。
最初はそう思ったが、今は特に心配はしていない。Aはこの1ヶ月大きなトラブルを全く起こしてないからだ。それよりも僕の寮に所属しておきながら規則を守れない生徒がいることが腹立たしい。
…図書室で勉強する気が削がれた。
早く本を借りて部屋へ戻ろう。本棚から零れた本の中から目当てのものを拾い、A達に背を向け足を進める。
「…トレイに拾ってもらったらしいな。ふん、お前レベルの生徒が副寮長の部屋なんか使いやがって。」
「…」
…僕のユニーク魔法であの煩い口を縫い付けることも出来たら良かったのに。彼が僕の寮生だなんて、考えただけで具合が悪くなりそうだ。
馬鹿の話は無視するに限る。
「それにしてもトレイも見かけによらないよな〜?」
「…何が言いたいんですか。」
…何故反応したんだA。思わず足を止めた。
少しでも反応すれば相手の思う壺だろう。
無視しきれなかった彼女に苛立つ。Aも連れてすぐここから去るべきだった…!
たまらず振り返り、彼女を呼ぼうとした。でもそれは、耳を疑うような言葉で遮られる。
「トレイが出来損ないを拾ったのは学園長から賄賂でも貰ったか、毎晩イイコトできるからなんだろ!?」
「あは!その噂、マジなんだ〜!」
「なんだって…?」
そんなわけが無い。僕の、幼なじみが!!
怒りのあまりマジカルペンを握る手からギリギリと革手袋の嫌な音が聞こえる。ついさっき魔法による私闘を罰したのは僕だ。今僕は、彼らと同じことをしようとしている。
でも許せなかった。トレイは優しい男だ。僕が1番よく知っている。部屋を貸しているのだって、行くあてのないAを放って置けなかったから。ただそれだけだ。
どんな制裁を与えようか、沸騰しそうな頭の中から魔法式を引っ張り出しながら愚か者共を睨んだ。
しかしそこに飛び込んできたのは。
「がッ…!」
寮生を殴り飛ばす、Aの姿だった。
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あ お 子。(プロフ) - ヲヲクさん» ありがとうございます!ゆっくりになってしまいますが、面白いと言っていただけるようこれからも頑張ります…!続編もよろしくお願いします! (2020年8月2日 9時) (レス) id: e194d3533b (このIDを非表示/違反報告)
ヲヲク(プロフ) - 凄く面白いです!頑張ってください! (2020年8月1日 21時) (レス) id: 9efd66ac59 (このIDを非表示/違反報告)
あ お 子。(プロフ) - 鹿野ユズナさん» 本当ですね。すぐに修正しておきます。ご指摘ありがとうございました。 (2020年7月18日 5時) (レス) id: e194d3533b (このIDを非表示/違反報告)
鹿野ユズナ(プロフ) - 最後の自己紹介、ディアになってますよ。クロウリーですよね? (2020年7月18日 2時) (レス) id: 6c05b173a1 (このIDを非表示/違反報告)
あ お 子。(プロフ) - うささん» ありがとうございます!更新速度上げられるように頑張ります…!! (2020年7月4日 19時) (レス) id: e194d3533b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あお子。 | 作成日時:2020年3月31日 22時