宙ぶらりんの期待 ページ10
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村上さんの部屋の中には彼女を匂わせるような物が何もなかった。
そんなことを確認してしまう自分も卑しいが、
もしかしたら、彼女がいる、というのは聞き間違いかもしれない。
それか、最近別れたのかもしれない。
そんな期待を胸のどこかに秘めている自分はもっと卑しい。
「ん。コーヒー。インスタントやけど。」
村上さんがマグカップをローテーブルに置いてくれた。
「あ、すいません。ありがとうございます。」
私の隣にドサッと座り、チーを捕まえて抱き上げる村上さん。
肩と肩は触れていた。
でもきっとそれに気づいて無駄に緊張しているのは私だけなんだろう。
私は温かいコーヒーを飲んで気を紛らわす。
たまにチーに構いながらチーの話や仕事の話、家族の話を淡々とした。
そして村上さんは私に聞いてきた。
「Aは付き合うとる奴とかおらんのん？」
よしよしよし、とチーのお腹を忙しく撫でながら。
「...いませんよ。」
「ほぉか。」
胸は痛むけれど、これは彼女の有無を聞けるきっかけになった。
マグカップを両手で包み、水面を眺めながら控えめに聞く。
「村上さんは、彼女さんいらっしゃいますよね？」
「んーまぁな。」
その曖昧な答えに私の淡い期待は崩れるに崩れなかったんだ。
「おんねんけどアイツ俺より忙しいてほとんど会うてへんねん。
今もアメリカかイタリアかどっかおるんとちゃう？」
「...正直なぁ、そろそろ終わりかとも思うわ。」
いつもの村上さんらしくない情けない声で、伏し目がちに彼はそう言った。
まだ宙ぶらりんな私の淡い期待。
抱いていたチーを床に下ろす村上さんを見ていたら、
村上さんは次に正面から私を見てきた。
何かが起こる、予感がした。
「...なぁ。
嫌やったら突き飛ばしてくれ。」
何のことだろうと頭を回転させようとした時には村上さんの腕が私の肩に回っていて、
次の瞬間、唇が重なっていた。
"猫にならんようにな"
錦戸先生の声がどこか遠くの方でかすかに聞こえた。
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ココナッツ(プロフ) - たむこさんっ…編集社と作家、文学作品に村上春樹、錦戸亮に村上信五…私のツボのオンパレード過ぎてこれはもうドキドキしかありませんっ続きを楽しみにしてます！ (2018年2月7日 2時) (
レス) id: d0c3580366 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たむこ | 作成日時：2018年2月5日 9時
