文豪と猫 (ページ7)

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忠告とお誘いページ7

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「ふうん。」

錦戸先生は面白くなさそうな顔をすると、吸っていた煙草を水で濡らしシンクの三角コーナーに投げた。

この三角コーナーも私が買ってきたものだ。

「あと....サッカーが好きらしいです。」

前に他の社員とレアル・マドリードがどうのこうのと盛り上がってるのを見たことがある。

「全然文学的やないな。」

「え？」

「村上春樹好きがムラカミて人好きとか言うから、もっと村上春樹の物語に出てきそうな男かと思っとったわ。」

心底ガッカリしたような顔をするからなんだかこっちも不服な気分になる。

なによ、自分から聞いといて。

「ムラカミさんて、彼女おるんやろ。」

キッチンに立ったまま、マグカップを傾けて緑茶をずずっと啜った。

私は何も言えなかった。

ただ笑われることを身構えるのに精一杯で。

「....アタリか(笑)」

ほら、やっぱり。

フフン、と得意げに片眉を上げて笑う。

だけど次に彼から出たセリフは私が予想していたモノと違った。

「山田さん、純粋やんな。

まぁ、せいぜい純粋過ぎて、猫にならんようにな。」

「.......猫？」

「そ。ネコ。

緑茶アリガトな。」

よく分からない忠告を残し、マグカップを少し上げて見せると彼はキッチンから出ていった。

そのよく分からない忠告よりも、私は彼がお礼を言った事に気を取られて"猫"の意味はあまり深く考えなかった。

そしてその時、私のズボンのポケットにあるスマホが音を立てた。

"今日飲み行かんか？"

まさに、噂をすれば。

その日、その誘いを断らなかったことと"猫"の意味をよく考えなかったことを私は後悔することになるとも知らず、

私は村上さんに誘われた事に浮かれていたりした。

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