彫刻の横顔 ページ5
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黄色いコアラの『ありがとうございました』テープが貼られたビニール袋を腕にぶらさげ、
灰色のマンションのインターホンを押す。
でも、応答がない。
...寝ているのか？
仕方なくドアノブに手をかけると鍵が開いていた。
ゆっくりドアを開けて玄関を覗く。
「こんにちはー。先生ー入りますよー。」
家の中は静かで、靴を脱いで揃えるとひんやりと冷たいフローリングの廊下を歩いた。
私の家より全然広い...26歳で2LDKかぁ...
仕事部屋のドアが開いてたからそこからそーっと覗くと、
大きいヘッドホンを付けて机に向かってる先生がいた。
すごく真剣な眼差しで、パソコンのキーボードを叩いてる。
先生の横顔は綺麗な凹凸のある彫刻みたい。
長い睫毛が時々パチパチとしばたく。
かすかにヘッドホンから漏れて聞こえる洋楽。
「うおっ！びびった！急に出てくんなやぁ。」
急にこっちを向いた先生の声に私もビクッと体を震わせた。
なんかあまりにも真剣だったから、つい息を殺してしまってた...
「何回も挨拶したんですけどね。」
「あっ、ソレ唐揚げ？」
ヘッドホンを首にかけた先生は、宝物でも見つけたような無邪気な目で私の腕にぶらさがったビニール袋を指差した。
「お望み通り買ってきましたよ...。」
「うっしゃ、丁度腹減っててん。」
よいしょ、と立ち上がるとうーん、と伸びをする先生。
「あ、なぁ、」
「はい。」
「緑茶、飲みたいんやけど。」
「....分かりました。」
私はあなたの家政婦ですか、と尋ねたくなる。
...いつもの事だけど。
彼にとっては私なんて原稿を取りに来て身の回りの世話もしてくれるオバさんくらいの存在なんだろう。
キッチンに入ると相変わらずの光景が広がる。
シンクに置かれたいくつものカップ焼きそばの容器。散乱してるゴミ。
キッチンに入るたびに片付けてるけど、次に来るときはまた同じ状態...
漫画家さんとか作家さんとかこういう人は少なくないし、きっとまだマシな方。
以前買って置いておいた緑茶のティーバッグを棚から出して、ヤカンに水を入れ火にかけ沸騰するのを待つ。
私はこういうちょっとした時に、
村上さんは今何をしているんだろうと考えてしまう。
そういう自分が、すごく嫌だ。
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ココナッツ(プロフ) - たむこさんっ…編集社と作家、文学作品に村上春樹、錦戸亮に村上信五…私のツボのオンパレード過ぎてこれはもうドキドキしかありませんっ続きを楽しみにしてます！ (2018年2月7日 2時) (
レス) id: d0c3580366 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たむこ | 作成日時：2018年2月5日 9時
