差し出されたジッポ ページ26
. ryo
「受賞作読みましたよ。いやー素晴らしかったです。こんな若い方だって知らなかったなぁ。」
丸メガネに黒いハイネック。作家です感丸出しのおっさんから話しかけたり、
「同じ物書きとして尊敬してます！握手、していただいていいですか？」
いかにもOLから転身して女のための下らん自己啓発本書いてますって感じのオネエさんに握手求められたり。
....アホくさ。
この会場におるのはただの時間の無駄としか思えへんかった。
山田さんは自分の仕事があるらしく会場に入るなりどっか行ってまうし。
こんなことやったら、家で音楽聴きながらネットサーフィンしとる方がよっぽど有意義や。
それに、
さっきのタクシーの中のアレに俺は無性に腹が立ってた。
なんなん？アレ。
完全に俺は蚊帳の外やって突きつけられたみたいで。
邪魔すんなって言われたみたいで。
あんな風に言われてもうたら、ムラカミという最低な男に嫌味のひとつも言われへん。
そこまでする程、好きなん？
なんて、聞かんかったら良かった。
なんやねん、あの顔。
何が、"はい"、やねん。
たかが浮気相手のくせに。
マジで相当なアホなんちゃう？山田さん。
ムシャクシャすんのが収まらんくて、俺は喧騒を抜け出してホテルの外に出た。
喫煙所の壁によっかかって胸ポケットから煙草を出す。
箱から一本出して咥えて、ズボンのポケットに右手を突っ込んだ。
けどポケットん中の右手はあるはずのモノに触れない。ただ布の感触があるだけ。
煙草を歯で挟みながら、今度は左手をポケットに突っ込むけどやっぱりポケットん中は空で。
....うせやん
煙草持ってきてライター忘れるとかある？
今すぐ吸って気分紛らわしたかったんに。
俺の気分の萎え具合とイライラは頂点に達しそうで、
咥えてた煙草を指で挟んで盛大なため息をつこうとした時やった。
「良かったら使うて下さい。」
俺の目の前にジッポが差し出された。
その腕を辿ると、茶髪の男が立って軽く俺に会釈をする。
「あ....ドモ。」
俺は男の顔を伺いながらジッポを受け取り、煙草を咥え直して火をつけた。
男の背丈は俺より少し高いくらいで、年齢は、多分俺よりは上やろな。
髪の毛は茶髪やけど明るくはなくて清潔感のある見た目やった。
そして、俺はその男が首からぶら下げた名札を横目で見て、動きを止める。
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ココナッツ(プロフ) - たむこさんっ…編集社と作家、文学作品に村上春樹、錦戸亮に村上信五…私のツボのオンパレード過ぎてこれはもうドキドキしかありませんっ続きを楽しみにしてます！ (2018年2月7日 2時) (
レス) id: d0c3580366 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たむこ | 作成日時：2018年2月5日 9時
