村上さんという人 ページ3
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忙しない朝。
いつものように満員電車に揺られる。
みんな、疲れた顔して。
ここではいつも自分だけの空間の取り合いが行われているように見える。
家族のため、生きるため、社会のため、私達は頑張っているのだ。
たとえ、望んでいなかった職に就いていたとしたって。
だから早く車が空を飛ぶくらいになって、朝、この狭く窮屈な箱で運ばれることもなくなればいいのに。
そんな事を考えながら、人に押し流され電車を降り、改札を出て歩いていたら、
「おはようさん。」
朝の憂鬱な気持ちを一瞬にして晴れやかにしてしまう声が聞こえた。
ちょうど横断歩道の信号が赤に変わり、立ち止まって振り返ると村上さんが私の横に並んだ。
爽やかなシトラスの香りがする。
「おはようございます。」
「...寝不足やろ。」
綺麗な二重のタレ目が私を見ながら言う。
「...二日酔い、です。」
「お前また飲んだんかぁ。ったく、懲りへん奴やなぁ。」
村上さんは呆れ笑いを浮かべた後、何かを思い出したような顔をした。
「あ、そか。昨日錦戸先生んとこやったんやろ。」
「ご明察です。」
「ふはっ(笑)お前が酒飲む日は決まって錦戸先生んとこ行った日やからなぁ。」
信号が青になり、私達は歩き出す。
「まあ、その気持ちは分からんでもないけど、
二日酔いんなってしんどなんのはAなんやからほどほどにしとき。」
村上さんの手が、ぽん、と私の頭に乗った。
それと同時に私の心臓も小さく跳ねる。
仰々しく大きいビルに入り、銀色の壁に"関英社"という金色の文字が私達を迎えた。
フロントのお姉さん達の挨拶に、
「おはようさんー。」
「おはようございます。」
返事をし、エレベーターの前に向かう。
エレベーターの前で立ち止まったのは私だけ。
「俺ちょっと一階に用あるから、また後でな。」
「はい。お疲れ様です。」
ぺこりと頭を下げると村上さんは私に背を向け、早足で廊下を歩いていく。
と思ったら、
あ、せや、と呟く声が聞こえ、くるりと私の方を振り返った。
「今度週末にでも飲み行こうや。」
八重歯を見せニカッと笑うと、ほななーとまた自分の道に戻る。
村上さんという人はこういう人なんだ。
私があなたのことを好きとも知らず、もっと好きにさせるようなことをさらっと言ったりしたり。
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ココナッツ(プロフ) - たむこさんっ…編集社と作家、文学作品に村上春樹、錦戸亮に村上信五…私のツボのオンパレード過ぎてこれはもうドキドキしかありませんっ続きを楽しみにしてます！ (2018年2月7日 2時) (
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作者名：たむこ | 作成日時：2018年2月5日 9時
