ハッピーエンド ページ17
.
「....ずっとこの歌、聴かれへんかったんやけど、
案外歌詞、覚えとるもんやな。」
泣いてる私の横ですばる先輩は照れ臭そうに笑った。
「おい、」
「.....はい、」
「泣き止んだか？」
「はい...、」
ぐいっと手の甲で涙を拭く。
突然、歌い出すのはずるい。そんなの、泣くに決まってる。
「ほんま、泣き上戸やなお前。」
ふはっと笑って、シャツの袖で残った涙を拭き取ってくれた。
シャツから先輩の匂いがした。
「...大阪、帰ってこようと思うねん。」
呟くように先輩の口から出た言葉。
「ちゃんと仕事探して、働いて、
...できれば音楽もまたやりたい。」
川の方を見てた先輩の顔がわたしの方に向いた。
「A。」
先輩の瞳の中に、私が見える。
当たり前のはずなのに、それがすごく嬉しくて先輩の目をじっと見つめてしまう。
「......まだ半人前もええとこやし、年上のくせに頼りないかもしらんけど、
でも、俺はお前と一緒におりたい。」
歯を食いしばってまた涙が出てこないように堪えた。
ちゃんと、最後まで泣かずに聞かないと。
すばる先輩からの大切な言葉を。
「.....これからもそばにおってくれへん？」
「もちろん、です。」
ゆっくり頷くと嬉しそうにくしゃっと笑った。
笑うと目尻にしわが寄るのが愛おしい。
「ほんまに？」
「だって、私、先輩のマーシーになるって決めたじゃないですか。」
「そうやったな。」
もう一度見つめあって、
先輩は少し首をひねって、私もそっと目を閉じて、
唇を重ねた。
キスをした後に照れたように目をそらして少し笑う先輩。
「ほな、そろそろいくか。」
立ち上がると手を差し出してくれて、
その他に捕まって立ち上がる。
気づけば、先輩に出会ってから6年目に入っていて、
6年前の今頃の私は多分これから何があるか知らない。
でも、大丈夫。
今こうして先輩と手を繋いで歩いてる私がいる。
ハッピーエンドは、いつかきっと訪れるから。
希望と優しさと少しの我慢があれば。きっと。
「先輩、」
「ん、」
「好きです。...大好き。」
二人の道に、二つの笑顔が咲いた。
そしてハッピーエンドはまた次の始まりへ。
________こっち向いて、センパイ。
Fin.
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なのはなさいた(プロフ) - すごく面白かったです！毎回こうゆうお話を読んでいると幼馴染が幼馴染が可哀想になってくるのは仕方ないことなんですかねー笑笑また新作お待ちしてます！ありがとうございました！あとお疲れ様です！ (2019年8月23日 4時) (
レス) id: 9a9c48371e (このIDを非表示/違反報告)
なのはなさいた(プロフ) - 読んでて号泣しちゃいました！ (2019年8月23日 4時) (レス) id: 9a9c48371e (このIDを非表示/違反報告)
ばる - たむこさーん！お久しぶりです。ばるです。受験終わり、春から医学部生になりました〜！受験期にたむこさんの作品で元気貰えたお陰です！ありがとうございます〜！！という事でまたもう一回読み直してみます（＾Ｏ＾） (2018年3月2日 22時) (レス) id: c5d7d8d0ab (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - たむこさん、私の拙いコメントに毎回お返事下さってありがとうございました！本当に素敵なお話でした。もう一度読み直してこようと思います( ´ ▽ ` )ﾉ (2018年1月18日 23時) (レス) id: d5fe1c2633 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - お疲れ様でした！毎日の楽しみに読ませて頂いてました。切なさ抜群で、中盤あたりは心臓がキューッとなるくらい感情移入させられました。大倉くんには｢大変よくできました｣の判子を贈ってあげたいです。いつか彼には極上の幸せを手に入れてもらいたい！笑 (2018年1月18日 23時) (レス) id: d5fe1c2633 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たむこ | 作成日時：2018年1月13日 18時
