貧乏でも幸せ ページ13
.
あれからずっと、私の個人情報はどうなったのだろう、と心配になってた。
でもよくよく考えてみれば相手は有名な芸能人なわけだし、
それこそ悪用でもしようもんならすぐわかっちゃうし。
そこは心配いらない。
とするとあとはもうひとつ。
「あのさ、この間のアイドルが落としていった免許証の内容暗記してたりしないよね...？」
休憩時間も相変わらずスマホを手から離さない大学生くんに恐る恐る尋ねる。
「...え？ああ、関ジャニの大倉のすか？
暗記なんかしてませんよ。ていうか、あれどうしたんすか？」
よかった。
あの短時間で暗記できるほど頭が良さそうじゃなくてよかった。
「この間本人が取りに来たよ。」
私は昼間お弁当屋さんで貰ってきた余りのカツ丼弁当を頬張る。
「えっ！まじすか！また会ったんすか！」
いーなー、と口を尖らせる大学生くん。
よかない！
感じは悪いし、個人情報は持ってかれるし。
しかも無断欠勤したのは君でしょうが！
とは口に出さず、ただひたすらカツ丼をもぐもぐと消化する。
まあこの子がなんにもしてないなら情報が流出することはないだろうし、
あの人は多分私のことなんて今頃は忘れてるだろう。
「ごちそうさまでした。」
わりと大きかったカツ丼弁当をペロリと平らげて、手を合わせる。
さて、仕事仕事。
時計を見ると深夜2時。
あと一時間働けば家に帰れる。
自分に喝を入れてレジに立つ。
このバイト生活がいつまで続くんだろうってたまに考えてみるけど、そのことを考えるのはだいぶ不毛。
生きてく上でのお金は必要だし、老後への貯蓄もしなくちゃいけないし、働くことはやめられない。
何か運命を変える転機でも来ない限り私はずっとこの生活を繰り返すに違いない。
明日は珍しくパン屋さんしかシフトが入ってないけど何をしよう。
食材を買っておいて、お惣菜の作り置きでも作ろうかな。
銭湯にゆっくり行くのもいい。
貧乏は貧乏なりに、幸せなのだ。
そもそも、裕福とか貧乏って他人と自分を秤にかけるから存在する意識なんじゃないかと思う。
だから、周りと比べなければいい。
自分が満足すればそれでいい。
それ以上でも、それ以下でもない。
深夜のコンビニは相変わらずコンビニのテーマソングだけが流れてて静かだ。
と思ったら来店音が鳴った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1541人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
にっきどLOVE - この話面白いです！！ 更新楽しみにしています！ 頑張ってください！！ (2017年7月21日 21時) (
レス) id: 7800028468 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - 面白いです。更新、楽しみにしてます (2017年4月17日 23時) (レス) id: 547fbdc7c8 (このIDを非表示/違反報告)
わい - はじめまして(^o^)！！楽しく読ませてもらいました！続きが気になります！更新頑張ってください！楽しみにしてます♪ (2017年2月17日 1時) (レス) id: 397f5c791b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：たむこ | 作成日時：2017年2月6日 23時
