特殊刑事課所属、唯乃勇者。2

ほんばん1▼ ページ21

「おはよ、みんな。逝ってきます」

はじめて見る、女性らしいふわりとしたシャツ。カーキのゆったりしたズボンは角度によってはスカートにも見えていつものクールな雰囲気とは違いなんというか、可愛い。髪もいつもはワシャっと掴んでゴムで縛っただけのスタイルなのに、何故かおろしている。ちょっと癖っ毛なのか、毛先だけくるんと内側に巻かれていて……何だその本気の格好。

「カバンちっちゃいかな？」

ねぇ、力二くん。と話し掛けられたらスグに大丈夫だよって俺の車に乗せるのに。何でAの今日の相手はウェスカーさんなんだ。

警察署前に停まった餡ブレラのロゴが入った車。中から出てきたのはもちろんウェスカーさん。

誰だよ、Aならデートの時にジャージで行くとか言い張ったやつ。全然可愛いじゃねぇかチクショウ。俺のトレース力クソかよ。開始早々作戦を打ち砕かれた我々に残された希望はもはや一つだけ。

「ママ、待って！」

「え、れむ先輩？」

「ボクもAと一緒にいく」

ぎゅーっとAに抱き着く。比較的背の小さいAだが、流石にボクよりは大きい。はじめは乗り気じゃなかったこの作戦もウェスカーのこの困った顔を見ればだんだんやる気が湧いてきた。

いってらっしゃいと手を振る警察の皆にいってきますと手を振って後部座席へとAを誘導する。まぁ、この可愛い後輩をギャングに落とさないためにもボクも一肌脱がないといけないか。

「Aはママだからボクの隣ね」

「おいボク、帰った方が身のためだぞ」

直球で攻撃してきたウェスカーとかいうオッサンにAには見えない角度で中指を立てて見せる。「このガキ」と、握り拳を作ったウェスカー。その拳をAが両手で包み込む。

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