【d!】おいしくたべれる賞味期限。【zm】

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『ぞむ！はやくはやく！』

zm「そう慌てへんでもお店は逃げへんで」


俺の手を引いてこっちこっちと走っていくAについて行く

今日は、Aが行きたいって言うた街の中心で開かれる市場に来とる

子供って不思議やな、こんなので喜んでくれるんや


zm「フード絶対取らへんでな？」

『うん！ぞむとのやくそくだもん！ちゃんとまもるよ！』


こくんと大きく頷いたAの頭を偉いなーなんていいながらフード越しに撫でる

一昨日の新聞の一家変死事件って小見出しのやつで、

Aが犯人の可能性も...って言われとったから一応、と言うことで

フードは絶対取らない、と約束をしている

まぁ、Aはええ子やし、絶対取らへんやろうけど


zm「な、最初は何見に行きたいん？」

『さいしょ...なにがあるの、？』

zm「んー...なんでもあるで？お菓子もいっぱいあるし...」

『おかし！』

zm「ん、お菓子な」


間髪入れずにそう言ったAを見て笑いながらお菓子を探し始める

確か、ちょっと前に見るだけ見に来た時はここら辺にあったんやけどな...

...甘い匂いするしこっちか


zm「お菓子なに食べたいん？」

『んとね...ちょこれーと！』

zm「チョコレート？...ああ、あの甘くて溶けるやつな」

『うん！』


案外甘ったるいものを食べたがるんやなぁ、とか思うけど

子供やし当たり前か、なんて考える

チョコレート、なぁ...

俺も昔は食べとったような気がするわ、

...食べとったとしても、もう、だいぶ前のことやけど


zm「ん、お菓子売っとるとこついたで」


考え事をしながら歩いていると

目の前にお菓子を売っとる店があってAに声をかける


『ほんと！？ぞむ！だっこ！だっこ！』


興奮した様子でこっちに手を広げてくるAが途轍もなく愛おしい

知らず識らずのうちに狼(俺)に手を伸ばす羊が可愛いくらい可哀想で

思わず喰べそうになる気持ちを押し殺しながら

Aを抱っこして、店のお菓子を見せてやる


『ぞむ！あれ、！あれほしい、！』


小さくて細い体、細い腕、白い首筋、

俺の方を見て楽しそうに笑う顔、お菓子を指差す指、

鈴みたいに耳に勝手に転がり込んでくる声、

全部に惚れる、全部がもっと欲しくなる

もう俺の物のはずなんやけどな...


『ぞむ、？』

zm「ん？ああ、すまんすまん、あれほしいん？」


心配そうに声をかけてくるAを見て俺はハッと意識を元に戻した

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