15年 ページ49
晶哉
「ちょっと待っとって」
と言い、すくっと立ち上がって何処かへ向かった。
そして何かを手にして再び玄関へ戻ってきた。
晶哉
「これ、」
私の目の前で1冊のボロボロのノートを差し出してくる。
” 算数ノート
6年2組 佐野 まさや ”
小学生の頃の、算数ノート？
ノートを開くと、1カ所だけくしゃりと皺が寄っているページがあった。
そこのページを捲る。
そこには拙い字で、こう書いてあった。
" Aちゃんのことが好きです。
僕とつきあってください。
気付くのおそくなってごめんなさい。
せいやくんが好きだから付き合えません。
ごめんね、まさやくん。”
思い出した。
小学校6年生の時に1年だけ祖母の家に住むことになったからって転校して来た隣の席の子。
誠也くんは中学校へ行ってしまって遊ぶ相手がいなかった私と転校したばかりで友達がいなかったその子はお互いの利害一致もあってよく一緒に遊んでいた。
誠也くんの誕生日プレゼントを買いに行くのにも付き合わせて、予算2千円で一緒に文房具屋さんに行った。
確か300円のおつりが出て、その子に駄菓子屋さんで売っていた300円のネックレスをあげた。
私が散々馬鹿にしていた十字架のネックレスって、
晶哉
「俺あん時、授業中に手繋いで告白してやろうって思っとったけど勇気でんくて。だから1時間目の時にノート書いて、6時間目の帰りの会で気付いてもらって振られたんよ」
懐かしそうに首元にかけている、塗装も剥げ掛けているボロボロのネックレスを触りながら話す。
そしてネックレスから手を離して、私の両手を包み込む。
さらりとしている冷たい温度なのに私の顔の集まる熱はどんどん上昇していくばかりだ
うそだ、こんなことって
晶哉が私に向ける笑顔は、昔一緒に遊んだまさやくんの影がしっかりと映っていた
晶哉
「あん時、15年っていう数字にこだわっとるって馬鹿にしたけど、それは俺のこと。
ずっと昔から、好きやったで。
Aちゃん。」
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作者名：もなか | 作成日時：2024年1月22日 1時
