15年 (ページ47)

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誠也side ページ47

『誠也くんは何もわかってない！』          

わかってないのは、Aちゃんやで。

        ずっと昔からAちゃんのことが好きやった。 多分、初めて見た時から何か違う感情を彼女に抱いとった。  

そして、Aちゃんが俺に向ける好意は恋愛感情じゃないことも知っとった。 だって、俺がAちゃんへ向ける目とAちゃんが俺に向ける目が確実に違うから。

  わかるで、好きなんやから。   

それでもAちゃんが俺にばっかりくっついてきて、『誠也くん誠也くん』と呼んでくれることは気分が良かった。   

やけど小学6年生のある日、気付いてしまったんや。  

Aちゃんがいつか本当の恋愛の感情を知ってAちゃんが俺から離れる時、俺は誰よりも近くでAちゃんを見送らなあかんということに。   

そんなん、見たくなかった。

   誠也 
「母ちゃん、俺……私立の中学受けるわ」   

そこからは男子高に入ったり地元から離れた大学で絵里とも付き合って、自分を守るためにAちゃんを突き放した。

   でも、いざAちゃんが俺以外の誰かを見るようになると手離したくなくなった。 まだ俺を見ていてくれ、そう思った。

   …本当は絵里と別れとった。 誕生日のあの日にマフラーを付けへんかったのは、気まぐれなんかやなくて心からAちゃんがくれるマフラーを待っとったから。 その日に、全部伝えようとしとった。   

間に合ってくれ、と思いながら公園でAちゃんを待った。

     でも、間に合わんかった。    

全部はあの小学6年生の時に逃げた時から決まっとったんや。
   

あの時逃げていなかったら、Aちゃんの俺への愛は変わっとったんかな。

     ほんと、Aちゃんも俺も、何もわかってへんかった。       

誰もおらんくなった公園で1人ブランコに乗りながら夜空を見る。
　

      誠也
 「Aちゃん、知っとる？俺がAちゃんのことを、ずっとちゃん付けで呼んどる理由。  ……あいつもな、ずっと君のこと、ちゃん付けで呼んどったからなんやで」  

 あの時の嫌な予感は、当たってたんや。        

俺の声はブランコの音によってかき消されていった。    

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