15年 (ページ46)

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そばにいたいひとページ46

20時5分前。 5分前に着いたのに、彼は既に居た。

     『誠也くん』

      私の声に振り返った誠也くんは目をぱちくりとして、嬉しそうに微笑んだ。   
　

誠也
 「Aちゃんありがとな。来てくれたんや」    

そう言って私の格好を見て、目を細めて再び笑う。   

誠也
 「Aちゃん、その格好かわええな？めっちゃ似合っとるで」 

  『ありがとう』       

誠也くんは私の方に向かって自分の手を差し出す。

  そして、一言。

誠也 「Aちゃん、こっちきーや？」        

…ああ、これは私が15年以上も望んでいた光景だ。  

やっと私の願いが叶うのか。    

そう思い、私は誠也くんの手を取ろうと腕を伸ばす。

   これで、私は幸せになるんだ。      

誠也
 「本当に、ええん？」     

誠也くんの声に動いていた手が止まる。いつの間にが誠也くんは笑顔から、困っているような笑顔に変わっていた。      

誠也
「今、Aちゃんの中におるんは、誰？」     

誠也くんの言葉で今まで私の頭の中でさまよい続けていた迷路が、一本道へ変わった。   

誠也くんへの愛は、いつも暖かいものだった。 初めて会った時も自分で感じていたじゃないか。  

「母親みたい」って。 

私はずっと誠也くんしか目に入っていなかった。 
だから、恋愛という種類の愛の感情を知る前に、この感情を愛だと、思い込んでいたんだ。

     なんでこんなこと、気付かなかったんだろう。気付けなかったんだろう。     

私にとって、大切な人は、   そばに、隣に居たいのは………     

誠也 
「もう一度言うな？      ………Aちゃん、こっちきーや？」          

………行かなきゃ。        

『ごめんなさい。ごめんなさい、誠也くん。私は行かなきゃいけないところがある』       

私は一度も振り返らないで元来た道を走った。    

20時ちょうどの出来事だった。