タイムリミット ページ45
晶哉が持ってきたのは私が全部売ったと思っていた昔の服。
一番私が履いていた花柄のワンピースに、白のパンプス。
誠也くんの、好きな服。
晶哉の、嫌いな服。
そこからは流れるように早かった。
晶哉の言われるがままワンピースを渡され、脱衣所へ詰め込まれた。
着替えるまで出してくれない雰囲気だったので着替えてリビングへ戻る。
晶哉
「………うん、これなら誠也さんは喜ぶと思うで」
行け、
そう言われて晶哉に押されるがまま、玄関へ追いやられた。
既に置いてある白のパンプスを履く。
私のスニーカーは晶哉の手によってどこかへ隠されてしまっていた。
晶哉
「行ってこい、お前がずっと望んどった事や」
後ろから晶哉の声が聴こえる。
20時まで、残り15分。
私はドアに手を掛けて、外に出ようとする。
『……っねえ、まさや……』
私は手を止めて、後ろに居る晶哉の方を振り返ろうとした。
しかし、出来なかった。
背中に、晶哉の手の平の感覚がある。
そっと触れられているのに、振り返らせてくれない。
晶哉
「俺、お前のこと好きやで」
でも、
「お前のおるとこはここじゃないやろ？」
その瞬間、優しく前に押される。
そしてバタン、とドアが閉まり、ガチャリと音がした。
いつも開けっ放しで注意しても直らなかったのに、
晶哉が、初めて自らドアの鍵を閉めた。
20時まで、あと10分。
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作者名：もなか | 作成日時：2024年1月22日 1時
