15年 (ページ44)

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危険なカオリページ44

優子
「え！？」      

優子の大きな声に私の思考が呼び戻される。
 優子はある1点の場所を目を丸くして見ている。

         誠也
 「Aちゃん」       

左肩に軽い重みと、嗅いだことのある懐かしい香りがした。 
まさかと思い、左を向く。

      『誠也、くん』      

そこには前より少し痩せてしまっているように見える誠也くんがいた。   誠也くんは、笑っていなかった。

     誠也くんは屈んで座っている私と同じ目線で止まる。 

そして私の目だけを見て、こう言った。         

誠也 
「今日、どうしても話したい事があるから
  20時にAちゃんの家の近くの公園で待っとるな？」

          それだけ言うと誠也くんは店を出ていった。 

結局、誠也くんは一度も笑わなかった。 いつもふにゃりと笑う誠也くんからは想像もできないことだった。     

そして、20時に、私の家の前……  あと、1時間後。

        行ってはいけない気がした。
 私の中で言い聞かせていた事実が狂ってしまう気がした。  それに、何かは分からないが直感的に行ってはいけない…。
微かに危険なカオリがしたんだ。

晶哉 
「お会計お願いします。」     

そんなことを考え巡らせていると、晶哉がお会計をし出す。
まだウーロン茶2杯と枝豆しか頼んでいない。   

『ちょっと何言ってんの晶哉。健と良規は……』

 晶哉 
「もし健と正門来たら今日は無くなったって言っといて」 

優子 
「え？あ、うん……わかった……」

  『ちょっと晶哉！話聞いて……』

     晶哉は一切私のことなんか見ない癖にここぞとばかりに男の力を使って私を腕を掴み、店の外へ連れ出した。優子もぽかんとして見送る。  私が何を話しかけても、うんともすんとも言わない。 ただズンズンと歩いて私を引っ張るだけ。

       目的地に着いた晶哉はガチャリと鍵のかかっていないドアを開けて更に奥へ進む。  

ここは、晶哉の家。 リビングで棒立ちの私をよそに寝室へ行って何かガサゴソとしている。   

20時まで、あと30分。      

ガラガラと戸を開けてリビングにあるソファの上に ” あるものを " 放り投げる。

      『なんで……売ったんじゃなかったの……？』