15年 (ページ42)

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新しい私ページ42

『え？送ってくれるの？』

  晶哉
 「お前なあ、いくら何でもこんな夜中だったら送るやろ。ブスでも襲われる時はあるで？」

   『最後の必要ないよね？』 

私一人だったら涙を流してただただ通った静寂な道を、私達はいつも通りに喧嘩をして騒ぎ立てながら帰宅した。  

髪を染め直した。 そして何故か晶哉も付いて来た。

   服も晶哉と一緒にやった日雇いのバイトで貯めたお金で沢山買った。 そして何故か晶哉も付いて来た。

今までずっとしてみたかった髪色と服装。 あの時に試着したMA-1も見事手に入れた。 ……まあ、黒かカーキかで喧嘩したけど。  

誠也くんの話は、正月明けに4人に話して以来誰とも話していない。 もちろん、誠也くんとも絵里さんとも関わっていない。 連絡が来ていたかもしれないが、LINEも電話番号も全て新しくしたので連絡が来ることは何もなかった。 

失恋してからは、私は周りに生き生きしているね、と言われるようになった。 前より話しやすくなったし、服装や髪型もとても似合っている、と。

その通りなのだ。 前までは「これなら誠也くんが好きそう」と考えて選んでいたけれど、今はこれが着たい、と思う服を選ぶようになった。 おしゃれが楽しくなった。 

誠也くん好みの服達は全てフリマのアプリで売った。 捨てるよりいいやろ、と晶哉に言われて晶哉に教えられるがままに全部売り出した。 

誠也くんが私の中から消えてしまったら、私の心は死んだも同然だと思っていた。 しかし、実際は私が思っていたものより全然違った。

   寧ろ、スッキリしたのだ。 

誰かのことを考えてモヤモヤしなくていい。誰かへの評価を気にして行動しなくていい。

   誠也くんは絵里さんのことが愛として大切で、私のことは家族として大切だったのだ。 

自分の中であのマフラー事件も上手に開き直ることができた。 ただ、誠也くんは言葉が足りないだけ。 絵里さんのためにも、不安要素である私は関わらない方がお互いのためになるんだ。

うん、これでいいんだ。

　

『まさや！帰ろう！』  

晶哉 
「おー、」

1年前までの私は春が苦手だった。まだ肌寒いのにスカートの下は薄目のストッキングしか履けないから。  

でも今は春が大好きだ。 大好きなぶかっとしているトレーナーとスキニーを着れるから。

  新しいスニーカーを晶哉に見せびらかしながらいつもの居酒屋へ向かう。