素直じゃないやつ ページ41
まさかの、晶哉のおばあちゃんは私の近所に住んでいた。
晶哉がベランダでくつろいでいたら涙を流しながら走っていく私を偶然見かけたそう。
こんな偶然ってあるものなのかとも思ったが、今はこの偶然に感謝をするべきだと思った。
私達はベンチに座ったままどこか遠くを見据えながらいろいろなことを話した。
あれから何時間経ったのだろうか。
12月の下旬だ。
2人共寒さで鼻までキンキンに赤くなっていた。でも話し続けた。
あんなことがあったから完全に心が静まるものではなかったが、晶哉が黙って話を聴いてくれたり………かと思えば全然関係ない健の面白い話をしてくれた。
このことは確実に私の心に安らぎをもたらした。
晶哉
「正月明けたら4人で遊ぼや」
ただの遊びのお誘いに思える言葉だけど、それは表面的で。
その裏には私を1人にさせないで皆で楽しもう、と言う意思が含まれているように感じた。
その言葉もそうだが、この数か月の晶哉の優しさが温かくて。
目のあたりがじわじわと熱くなる。
『晶哉は、ヒーローみたいだね』
晶哉
「……犬のヒーローなんて、人気でぇへんやろ」
先程の晶哉を真似してみた。
私は晶哉に ” ヒーローみたいだね ” と表面的に伝えて心の中で ” ありがとう ” と伝えてみた。
晶哉は人差し指で鼻の下を触りながらそう返した。
ねえ、寒かったけれどさっきまでは耳は赤くなかったよ。晶哉。
どうやら私の思いは彼に伝わったようだった。
晶哉
「何見とんねん、帰るぞ」
私の生暖かい目線に気付いた晶哉は居心地が悪そうにベンチから離れてしまう。
素直じゃないな、と思いながら晶哉にのんびりと付いていく。
ここで少し疑問に思ったことがあった。
『晶哉、なんで私の家の帰り道わかるの？』
公園に出てからとりあえず晶哉に付いていっていたが、私の家へどんどん近づいていることに気付いた。
私の質問にはあ？と言わんばかりの表情で振り返る。
両方のポッケに手を突っ込んでヤンキーみたいにしているけど、犬のマフラーを身につけているから何も怖くない。
晶哉
「俺がお前の家知っとるわけないやん。俺の家もこっちだから。ほら、次の道はわからんからはよ教えて」
『え、ああ……なるほど……あ、次は右だよ』
晶哉
「ふーん……わかった」
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作者名：もなか | 作成日時：2024年1月22日 1時
