15年 (ページ36)

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物凄くたのしいページ36

『晶哉どうしたの、ここ女性物しかないよ』

晶哉
『知っとる』

晶哉を追うとさっきの黒のMA-1をハンガーから取って、私にずいっと押し付けてきた。  

晶哉
 「着るだけなら、無料やで」

     ……着るだけなら、無料。 
先程抑え込んでいたワクワクが一斉に戻ってきて晶哉に鞄を預けてMA-1を羽織る。 
少しぶかぶかしていて、でもそれが可愛い。
 これにスキニーを履いたら……  

晶哉
 「これにスキニー履いたらもっとええんやろうな」 

 『え？』   

私が思ったことをそのまま晶哉は代弁したかのように言った。
 そして値札を見て「高いな……」と小さく呟いた。    

晶哉
 「やっぱりお前、そういう方が似合うで」     

貸せ、と言ってMA-1をハンガーに戻してさっさと店から出る晶哉。
 恥ずかしかったのか、羽織る時に預けていた私のカバンまで持って出て行ってしまった。 
あのカバン、ピンクのエナメル地なのに。   
なんだか先程までイライラしていたのが馬鹿らしくなってきた。 せっかく2人でショッピングモールまで来たのだ。
年末年始は会えないのだから、楽しもう。   

『まさや！』

  晶哉
「なに」

  『カバン！』

 晶哉 
「え……あ、ああ……」    

晶哉がカバンを返そうとしてきた手を掴み、引っ張る。

  晶哉
 「おい！ちょっと待てや！引っ張るな！」

  『さあさあ行きますよ晶哉さん！』

 
晶哉
 「何やねんそのキャラ……」          

自分の意見を言い合える人との買い物ってこんなに楽しいんだ。 誠也くんと誠也くんのお母さんへの誕生日プレゼントを買いに行った時は誠也くんの好みに合わせてアクセサリーとか雑貨を選んだ。
誠也くんと一緒に居れると言うだけで幸せだったからそれも楽しかった。  

でも、今の楽しさは今までの楽しさとは何かが違う。 

趣味も意見も違うからこそ、2人の好みが合致した時の面白さは尋常じゃない。 
誠也くんへのプレゼントだって言ってたのに、時々へんなおもちゃとかやけに触り心地の良いタオルとかに脱線しちゃったりもしたけど、それも含めて楽しい。