15年 (ページ29)

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まるで… ページ29

『ということで………ごめん。やっぱり、だめだった』      

私が話している間、晶哉は何一つ言葉を発していなかった。

 電話だから相手の顔を見れないって言うのに晶哉から伝わる無言は、しっかりと私の言葉に耳を傾けているように思えた。     
何を、言われるんだろう。 
ドキドキとしつつ晶哉の言葉を待つ。 
晶哉から放たれた言葉は、意外なものであった。

         晶哉 
「だろうな」     

『………え？怒らないの？』

  晶哉 
「お前、俺のことなんやと思っとんねん。
そんなんで諦められるんだったら世の中失恋した人は全員実践しとるやろ」   

『じゃあ、私が諦められないって晶哉は知ってたの？』

      晶哉 
「………まあ、もしかしたらっていう数パーセントの望みくらいはあるかなって」   

『あ、ああ……なるほど……』

      確かにそうだよなあ。 
だけど私の言葉にいつも即座に突っかかってくる晶哉は、知っていたのか、と言う質問に対して少しだけ次の言葉に隙間があった。  
もしかしたら、ゲップでもしたかったのかもしれない。
晶哉はコーラが好きだから。

       晶哉の近所の方でもお祭りをしているのだろうか、 スマートフォンから太鼓の音が聴こえる。

        『晶哉のところもお祭りやってるの？』  

晶哉
 「え？ああ……そーみたいやな」 

  『見える？お祭りの様子』 

 晶哉
 「いや、ベランダからは見えへんな…っうお！…さむ、」    

無音ではあったが風の音と晶哉がぶるりと震えた音がなんとなく聴こえる。 
どうせまたタンクトップで過ごしているのだろう。
だから3か月に1回のペースで風邪を引くんだよ。
こんなこと言ったら、また飲み物掛けたことを掘り返されるだろうから言わないけど。

      要件は終わったけれど、なんとなくお互い通話終了の合図を出さない。
　

  私の近所の盆踊りの音とスマートフォンから聴こえる晶哉の近所の太鼓の音が鼓膜を通って脳内で一致する。   

まるで、

       『まるで、同じ場所にいるみたいだね。』