15年 (ページ28)

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懺悔の時ページ28

久しぶりの実家のいつものベランダに出る。 
地元は田舎だけれど、排気ガスの匂いがしない透き通った夜風はとても気持ちがいい。
  

一度深呼吸をする。
今から多大なお説教を受けると分かっているから… 

常に鍵が開いているとはいえ、のんびりサイダーを飲んで過ごしている途中にいきなり部屋に押し入ったこと。   
そして、前から「無理に忘れなくて良い」と言われたのにそれを無視して「誠也くんを諦める」宣言をしたこと。   
電車の中でLINEをしてくれていたのに私が途中で切ったこと。
 それも、LINE中に誠也くんに再び落ちてしまったこと。
     この3つを懺悔しなければいけない。 

何度も深呼吸をするけど、彼の眉間に皺が寄った顔が消えてくれない。   近所の公園ではお祭りが行われているのだろうか。 

ベランダに出ることで、よりはっきりと盆踊りの音が聴こえる。

     『......やるしかない』       

晶哉のトーク画面にある電話のマークのところをタップする。 
晶哉がこれに出なかったらLINEで謝ろう。
うん、そうしよう。だから出るな、出るんじゃない。

    晶哉 
「……もしもし」   

『……出てしまった』  

晶哉
 「いやお前からかかってきたから出たんやけど。で、何」

   『あ、いや……あの……懺悔の時間だから……言わないとって思って……』

晶哉
   「はあ？懺悔？何言っとんねんお前。ちょっと待ってて。 ……うん、そうそう。だからちょっとベランダ出るね、ばあちゃん。  ……ごめん。で、何のことか説明して」     

電話口の向こうから晶哉の声が遠くなった。
そして”ばあちゃん”という人に対してすごく優しい声色で何かを伝えていた。

晶哉ってこんな優しい声出るんだ。 
その後に階段を上る音とガラガラ、と扉を開ける音が聴こえた。

     『あ、うん。あのさ、』      

不思議なものだ。 
さっきまでは怒られると思い、電話をかけるのにも躊躇っていたというのに。 晶哉の声を聴くと大丈夫なんじゃないかって思って正直に話せる。

  誠也くんと話す時はできるだけ自分の良い所を見せたくて、多少の取り繕いをしていたというのに。