15年 (ページ27)

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サイダーのようにページ27

私の目を優しく覆ったのは誠也くん以外の何者でもなかった。
 そのままスマホを抜き取られて、
また私の手に何かを代わりに渡す。

    『……これは？』    

カサ、と音がする小さなそれは
水色の袋の中に入っている小さな飴玉だった。    

『あめ？』    

私の言葉にふふ、と笑いながら
誠也くん自身も同じ飴玉を持って見せてきた。    

　

誠也
「これな？駅に向かう途中に駄菓子屋さんで見つけてん。
ほら、Aちゃん水色が好きやったやろ？
だから思わず買った」    

水色が好き……って……
私が水色が好きと言ったのは
過去も今もあの3歳と時しか言っていない。
 それを誠也くんはずっと覚えていたというのか。

誠也
    「あめって舐めとったら乗り物酔いも良くなるんやって？
ほら、一緒に舐めよや」   

『……うん、ありがとう』      

駄目だって、駄目なんだって私。 
このままじゃ、またいつものパターンになる。   
誠也くんの顔が見れないまま
震える指先で飴玉を口の中に入れる。 

しゅわしゅわと舌先で弾くサイダーの味も、
今は何の刺激にもならない。

誠也
       「じゃあ、駅まで寝とき？はい、ごみちょうだい？」     

誠也くんは私の手から飴玉のフィルムを取って、
自分のカバンのポケットにしまう。 

そして私の頭にそっと左手を添え、
ゆっくりと誠也くんの左肩へもたれ掛けさせた。    

誠也くんの肩に頭を預けて初めて感じる
 誠也くんの匂い、誠也くんの体温、誠也くんの身体。     

誠也
「おやすみ、Aちゃん」   

そして、誠也くんの優しさ。         

………ゲーム、オーバー。        

ごめん晶哉。
やっぱり私、この人のことを諦めきれないみたいだ。      
まどろむ意識の中で晶哉からの通知音と、
誠也くんが私のスマホのスリープボタンを
カチリと押す音が聴こえた気がした。          

” どーなん？諦められるん？"      

彼からの文字は、誠也くんの手の中に収まって、消えた。