最終手段 ページ26
定刻通りに電車が来る。
誠也くんが窓際の席を譲ってくれたのでお言葉に甘えて座る。
地元まで2時間と30分。
10cm隣には誠也くん。
この山場を越えれたら
私は自信を持って「吹っ切れた」と言えるだろう。
『よし、』
誠也
「ん？なにがよし、なん？」
『え、いや……よし、乗り物酔いしないぞって言う意味で……』
誠也
「乗り物酔い？あ、そうやな。Aちゃん、小さい頃からよう乗り物酔いしとったもんね。大丈夫？」
『ウッ…………』
誠也くんからの
「昔の私のことをよく覚えている攻撃」で100のダメージ。
駅に来る前に買ったミネラルウォーターで体力回復を図る。
誠也くんが身体を動かすたびに香ってくる
誠也くんの香水の匂いで私は既に瀕死状態だ。
なんでこんないい匂いするの、男の子なのに。
電車が出発して30分すでにゲームオーバーの未来しか見えない。
………こうなったら最終手段だ。
私はスマホを取り出して
トーク履歴の一番上にいる人をタップする。
” 晶哉殿。既にヒットポイントがわずかしかありません ”
するとすぐ既読になり、犬が呆れた表情のスタンプを返される。
” お前の意思豆腐並みやん ”
” 違う、誠也くんの匂いがいい匂いなのが悪い。男の子なのに。”
” なんやそれ、俺らの匂いは臭いってか ”
思わぬ誤解をされてやばいと思い、
自然とスマホの画面と自分の顔の距離が近くなる。
” 違う違う！君ら3人はみんないい匂いだよ。
良規は爽やかだし、健はえ っちな匂い ”
"え っちとか女が言う事ちゃうやろ ”
” だって本当にそうなんだよ、甘くてなんかえ ろさがある ”
” お前それ健に絶対言うたらあかんで？
あいつ自分の匂い気にしてて
ずっとミントの香りがするファブリーズを何十回もかけてるのにそんな匂いになっとるんだから ”
必死に自分のジャケットに
ファブリーズをかける健を想像して思わず笑ってしまう
ああ……健のことだから何度も何度も匂い確認してそうだな。
「健のフェロモンの匂いなんだね」
と返信しようとしたら
急に視界が真っ暗になった
さっきまで時々香っていたあの匂いが、近く香る。
誠也
「Aちゃん、そんなにスマホ見とったら気持ち悪くなるで？」
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作者名：もなか | 作成日時：2024年1月22日 1時
