15年 (ページ25)

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勘違いするな私！ページ25

『だから、もう強行突破しかないなと思って』  

晶哉 
「……お前がそう考えたならええと思うけど。
俺が口出すことはできへんし。」   

『うん！！そういうことで！今までお世話になりました！』

     正座に座り直して今までの有難うを込めて晶哉に頭を下げる。 
晶哉は顔だけ窓の方を向いて外の景色を眺めていたけど、
少しだけ口角が上がっているような、そんな気がした。

    『よし、じゃあアイス食べよう……って溶けてる』 

晶哉 
「そこにスプーンあるやろ？すくって食え」

  『こんドロドロなアイス美味しいわけ………あら不思議』 

 「それ、食べ終わったらちゃんと洗えよ」          

『うん、これでよし』
　

   服装はできるだけ楽に。
Tシャツとジーンズ。 
どうせ電車の中で寝るんだからと化粧は殆どしなかった。
 晶哉の家に遊びに行くようなスタイルだ。
まあ晶哉だったらすっぴんなんだけど。    
誠也くんと一緒だからってもうお洒落なんかしない。     
私はもう誠也くんを諦めたのだから。      

駅の改札口前で誠也くんと落ち合う予定だ。 
キャリーケースをガラガラと引いて向かうと、
そこには大きなボストンバッグを持った、
ひと際目立つ人がいた。  
　
誠也 
「あ、Aちゃん」    

私を認識した瞬間、
長い睫毛を伏せていた目をキラキラと輝かせてふにゃりと笑う。
 心臓が収縮して小さくなった感覚を覚えたが、
違う違う、と言い聞かせて誠也くんの元に向かう。  

 『ごめんね、待った？』

誠也 
「ううん、全然。ほな行こか」  

  そう言って私の手からキャリーケースの持ち手を奪い、
その代わりに電車の切符を渡す

    『え、キャリーケース……あと切符……』

 誠也 
「男やし持たせてくれへん？あと年上なんやから奢らせて？」    

ほらこれだ。
 この笑顔と優しさに私は何度も落ちてきた。 
つい5分前に固く決心していた心が
いとも容易にぐらぐらと揺らぎ始める。     
これはいつものことなんだ。 
誠也くんは女の人には優しいから、
絵里さんにも勿論していることなんだ。
 私だけじゃない、勘違いするなA。   

私だから特別なんてこと、誠也くんにはないんだ。

  自分に言い聞かせる度に落ち込みそうになるけど、
こうやって自分の心を痛めつけないと
また誠也くんを好きになって最初に戻るだけだ。